2012年6月2日、江東区青海の日本科学未来館で、「Maker Conference Tokyo 2012」というイベントが開催された。サブタイトルは、「『つくること』の未来を語り、Makerムーブメントの可能性にふれる」。日本では2008年以来、東京と岐阜県大垣市で関連の展示イベントが活発に開催されてきたが、今回は初めてのカンファレンス型のオープンイベント。提唱者の米Make誌発行人デール・ダハティ氏の基調講演を筆頭に、7つの分科会で活発に議論が交わされた。

米Make誌ファウンダー兼発行人デール・ダハティ氏

 現在、米国では、ちょっとした「DIY(Do It Yourself)」ブームが起こっている。背景にあるのは、3次元プリンターやレーザーカッターといった高性能な工作機械の普及が進み、大学や研究機関などを通じてアクセス可能ならば、学生や個人でもそん色ないレベルの製品プロトタイプを製作できるようになっているというテクノロジーの進化がある。

 また、クラウドファンディングのような資金調達のプラットフォームもあり、ユニークな製品アイデアでデモ機を製作し、起業資金を集めるという人も出てきている。そうしたムーブメントの発信源となっているのが米Make誌。2005年に創刊された、米国初の電子工学系DIY工作専門誌だ。

 サンフランシスコ・ベイエリアでは、創刊からほどなくして、Make誌の主催によるDIYの祭典「メイカー・フェア(Maker Faire)」が開催されるようになっている。その人気は年々上昇傾向にあり、今年5月に開催された際には、2日間で約11万人が会場に押し寄せたという。

 メイカー・フェアは、自分で作った作品を出展したり、その場で出展者と一緒にDIYを楽しんだりできるというイベントだ。Maker(このコミュニティではメイカーと発音する)と呼ばれる出展者は、エンジニアからクラフト作家、ホビースト、アーティスト、教育者、作家まで年齢も経歴も多岐にわたる。それゆえ、出展内容も電子楽器などデジタルガジェットからクラフトワークまで実に幅広い。また、前回は単なる来場者だった人が、次回は出展者になるケースや、出展者同士が次回、コラボレーション作品を出展するケースも多いという。

 このような「Makerムーブメント」は、いわば、ソフトウェアによる情報化社会をものづくりの再生につなげるものと評価され、デール・ダハティ氏はホワイトハウスに呼ばれ、オバマ大統領から「変革の旗手」の栄誉を受けている。

 その人気は世界的に拡散しており、現在、同種のイベントは英国や韓国、中国、シンガポールなど世界60ヵ国で開催しており、中でもいち早く反応したのが日本だという。