「2島返還」も難しい現実
「日本は米国の支配下にある」

 このように、ロシアではインテリから一般市民まで、4島返還は「したくない」のではなく、「する必要がない」と捉えられている。私の28年間のロシア生活の中で、北方領土を返してもいいと言ったのは小さな子ども1人だけ。「ロシアは大きな国だから、小さな日本に島をプレゼントしてもいいんじゃない?」というのが、その理由であった。

 4島返還は大変難しいが、2島返還なら少しは可能性がある。なぜなら、日ソ共同宣言は両国議会が批准し、法的効力があるからだ。しかし、ロシア側は「歯舞、色丹を返したら、そこに米軍が来るではないか」(=だから返せない)と主張している。

 これは、「返したくないための詭弁」に思えるが、そうともいえない。ロシアには、米国を絶対信用できない理由が存在するのだ。

 1990年10月、西ドイツが東ドイツを編入した。ソ連のゴルバチョフは、ドイツ再統一を認める条件として、米国に「(反ソ連軍事ブロックである)NATOをドイツより東に拡大させないこと」を要求。米国は「拡大しない」と確約した。

 しかし、その約束は、あっさり破られる。1999年、2004年の大幅拡大で、東欧諸国のほとんどだけでなく、旧ソ連のバルト3国もNATOに加盟した。それでロシアは、29ヵ国からなる「超巨大反ロシア軍事ブロック」と対峙する羽目になったのだ。

 このトラウマがあるため、ロシアは、決して米国のことを信用しない。では、安倍首相が「返還された島には米軍基地は置かない」と発言していることについては、どうなのだろうか?

 これも、「まったく信用されていない」といっていい。

 なぜか?ロシアから見ると、日本は米国の支配下にあり、完全な独立国家と見なされていないのだ。ロシア政府は、米国が「基地を置く」と決めれば「日本は抵抗できない」と確信している。