佐藤優 知を磨く読書2026年3月9日、米フロリダ州ドーラルの「トランプ・ナショナル・ドーラル・マイアミ」で開催された共和党議員会議にて、演説を終え降壇するドナルド・トランプ米大統領 Photo:AFP=JIJI

最前線で働くビジネスパーソンが押さえておきたい、時代の変化とその背景を理解する上で欠かせない注目書籍を作家で元外交官の佐藤優さんが厳選する。明らかに実力不足なのに勘違いな自己主張をする部下にどう接すればいいのか?新帝国主義のメンバーになれる国となれない国とは?地学の知識を習得する意味と、高校レベルの地学の概要を習得できる一冊とは?『すぐに「できません」と言う人たち』『サクッとわかる ビジネス教養 これからの世界の紛争』『日本史を地学から読みなおす』の3冊から「ここだけは読んでほしい重要な箇所」を抜粋して紹介する。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優)

明らかに実力不足なのに
勘違いな自己主張をする部下

 榎本博明著『すぐに「できません」と言う人たち』は、企業人材育成の第一人者である著者による優れた指南書だ。能力が基準に達していないにもかかわらず、組織による自分の処遇が不当であるとの不満を持つ分子が企業でも役所でも障害になっている現状に厳しくメスを入れる。

榎本博明著『すぐに「できません」と言う人たち』PHP新書、2026年2月刊行榎本博明著『すぐに「できません」と言う人たち』PHP新書、2026年2月刊行

〈日本には努力は尊いとみなす文化的伝統があり、努力主義が根づいているため、このような誤解が生まれるのだろうが、欧米流の成果主義で評価されるのは努力ではなく、あくまでも成果なのである。その厳しさをどこまで理解しているのか、疑いたくなる事例も少なくない。
 明らかに実力不足なのに、勘違いの自己主張をする人物に対しては、このような文化的背景についての知識を与え、自覚を促すような教育的働きかけが必要だろう。それだけでは十分に機能しない場合は、欧米流に厳しい成果主義の原理を取り入れ、無責任な自己主張を抑制することも考えるべきだろう〉(59~60ページ)

 企業も役所も「仲良しクラブ」ではない。客観的な結果を突き付けて、幼児的な全能感を持つ部下を厳しく指導するのが中間管理職の仕事なのだ。部下におもねる上司が増えると、日本の企業も役所も根腐れを起こす。