これらはいずれも文大統領が会談で取り上げたかった事項であり、それについて会談に先立つ記者団との問答で否定的な見解を述べた。これは従来の米朝会談で、韓国側から北朝鮮の意図について間違った説明を受け、振り回されてきた米国のいらだちを表すものであろう。

 文大統領は首脳会談に先立ち、ポンぺオ国務長官、ボルトン国家安全保障担当補佐官、次いでペンス副大統領とも会談した。これは首脳間の会談が成功するためには北朝鮮に対する政策に大きな影響を及ぼす側近を説得することが重要との考えからであろう。

 しかし、ポンぺオ長官等との会談には、ハリス駐韓国大使やビーガン北朝鮮政策特別代表など4人が加わり、少人数での緊密な会談の雰囲気が損なわれる形となったようだ。北朝鮮への強硬姿勢を唱えるトランプ大統領の側近を膝詰め談判で説得するという意図をくじく米側の対応であった。

米朝会談を進めるのであれば、
まず北朝鮮に非核化を促すのが本筋

 そもそも、韓国側は米朝を仲介するとは言うものの、これまでやってきたことは金正恩委員長の“首席報道官”的な役割である。

 米朝首脳会談が物別れに終わった最大の理由は、北朝鮮が寧辺の一部施設の廃棄と見返りに国連制裁の実質的な全面解除を要求したからである。これは北朝鮮がほんの少しの犠牲で制裁を解除させ、核を保有したまま逃げ切ろうとしたからであり、北朝鮮に非核化の意思がないことがより明白になったからである。

 米朝間の交渉を再度動かすためには北朝鮮の態度を変える必要がある。文大統領が仲介の労をとるのであれば、まず北朝鮮に行き、金正恩委員長に譲歩を迫ったうえで、その成果を持って、米国に行くべきである。

 文大統領が「南北首脳会談を推進する計画である」と述べたのに対し、トランプ大統領が「南北首脳会談を通じて、あるいは南北接触を通じて韓国が把握する北朝鮮の立場をできるだけ早く教えてほしい」と述べた。