診察したところ、腰、両臀部、右足の太もも、ひざと下腿(ひざから足首)に強い痛みを訴えていたが、痛み以外には感覚異常もなく、血液や腎機能などの検査結果にも、特段の異常は見られなかった。

 ただ、痛みのある部位の筋肉は慢性のコリによってガチガチに固まっており、押すと強い痛みが生じるしこり「トリガーポイント」が広範囲でみつかった。通常、筋肉の痛みは軽視されがちだが、実はとんでもない激痛を起こす。この男性の場合も、歩行もままならないほどの痛みの原因は、筋肉にあったのだ。

 北原教授はまず「筋肉内刺激法(IMS)」を行った。IMSとは、東洋医学で使う針でトリガーポイントを刺激する治療法だ。一般のトリガーポイント注射に比べて、針が細く、薬を使わないために副作用が少なく、広範囲を治療するのに適している。

 慢性疼痛に使われる鎮痛薬の中でも副作用の少ない薬と、胃が荒れて食欲が落ち、体力が低下していたので、胃腸機能を整えて体力を回復する効果のある漢方薬を処方した。

 IMSは、治療1回目にして効果を発揮。男性は痛みをこらえがながらも、翌日には仕事に復帰することができた。さらに2回目の来院時には痛みの範囲もだいぶ縮小。「腰とお尻の痛みは減りましたが、右の足だけがまだ痛い」との本人の訴えに応え、自宅で行うストレッチと体操を指導。以降、IMS、服薬に加え、腰や足に圧をかけて血流を適度に制限し、短時間で筋力をアップすることができる加圧トレーニングも組み合わせて治療を進めた結果、男性は1年足らずで、数年来の腰痛やひざ痛と決別することができた。

【症例2】

 80代男性。脊椎の圧迫骨折で生じた腰痛が、骨折治癒後も治らない。「痛みがどうしても治まりません。助けてください」という本人の強い訴えにより、整形外科から紹介された。

 男性は、その1年前から整形外科にかかっていた。レントゲンで骨折が見つかり、治療を受けたが、骨はくっついても痛みは消えない。強い鎮痛剤はもとより、神経ブロック注射も効かない。一向に治まらない痛みに、患者も医者も困り果て、北原教授を頼ったのだった。

 さっそくレントゲンを撮ると、男性にはパッと見ただけでも3ヵ所もの骨折が確認された。骨粗しょう症から来るものだったのだが、男性は女性に比べてもともと骨が強く、圧迫骨折に至るケースは極めて少ない。しかも、複数箇所で骨折するというのは、まずない。

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「難治性腰痛」はなくならない

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