「この場合、疑われるのは、がんの骨転移です。骨はがんが転移を生じやすい臓器の1つで、多くのがんが進行すると骨転移を起こします。
転移を起こした骨はもろくなり、骨折しやすくなります。痛みを伴うことも多く、がんの痛みの最も大きな原因にもなります。
男性は腰痛を訴えており、私は前立腺がんを疑いました」
そう考えた北原教授は、さっそくMRIを撮影した。予想通り男性は前立腺がんからの骨転移を起こしており、末期であることが判明した。
前立腺がんは、早期発見・治療すれば、怖くないがんと言われている。骨転移した時点でステージはだいぶ進んではいるのだが、それでも1年間もの間、治療が受けられなかったのは痛い。
ここから先は、ペインクリニックの領域ではない。北原教授は男性を、泌尿器科に回した。
「どうなってるの、と怒りを覚えました。医者であれば、当然、がんを疑うべき症例です。
恐らく、患者が『痛い』と訴える部位しか診ていなかったのでしょう。私はよく部下たちにも言っています。『患部だけ診てはいけない』と。常識を持ってほしい。
高齢者の男性に圧迫骨折が起こることはまれで、しかもそれが複数起こることはもっとまれ。医者であれば知っていて当たり前の知識です。それをどうして見逃したのか、理解できない」
医者が変わらないと
「難治性腰痛」はなくならない
どうして、症例1、2のようなことが起きてしまうのか。北原教授は3つの理由を挙げる。
1.「難治性」という言葉のあいまいさ
難治性には、以下に挙げる3つの要因があり、相互に関連しているが、それを認識している人はあまりいない。
1)疾患そのものの要因:幻肢痛などのように、対処法も確立しておらず、どの医療者にとっても難しいもの。



