2)患者側の要因:身体的(例:肝機能障害や腎機能障害があり、薬剤が使用しにくい)、心理社会的(例:独居で薬剤のコンプライアンスが不明、うつ状態がある、職場や家庭でのストレスが大きい)など。気づきにくいこともあり、対処も難しい場合がある。その意味で難しい。

 3)医療者側の要因:医療者(医師)に慢性痛についての十分な知識や経験がない場合、前2者に比べると、「難治性」は高まる。

 医療者が自分自身の慢性痛に対する知識・経験を“客観的”に評価することは困難(だいたい、過大評価する)。一方、患者側は医師には十分な知識・経験があると思い込む。そこから、相互誤解による悲劇が生じる。

2.整形外科医は必ずしも慢性痛の専門家ではない

 1)整形外科医は、急性の筋骨格系疾患の治療のエキスパートである。しかし、慢性痛と急性痛とは全く別物であり、慢性痛の専門家とは言えない。

 2)(偏見かもしれないが)整形外科を志望した理由は、原因を見つけて切ったり貼ったりして治すことが好きだから…という医師が多い。だから、心理社会的な“湿っぽい”ことは比較的苦手に見える。しかし、慢性痛には心理社会的な要因が潜んでいる場合が多い。

 3)整形外科医は、開業したら整形「内科」医になってしまう。小さな医療機関では、手術などはめったにできず、保存的治療が主となる。ところが、大学病院など大病院での整形外科の教育は、手術などの外科的処置が中心であり、心理社会的アプローチはもちろん、臨床薬理学的な考え方も教えることはあまりない。

 4)整形外科医というが、実際は、肩関節の専門家、脊椎の専門家…などで、身体全体を診るような教育は受けていない。だから、腰が痛いからといって、近くの整形外科医に行っても、その医師が必ずしも腰の専門家とは限らない。

 それ以上に問題なのが、実際の臨床では、特に高齢になれば患者はさまざまな合併症をもっていることが多い。しかし、専門外の事はあまり知らない。一部にはよく勉強している医師もいるが…。

 これは、内科など他の科でも同じ(循環器内科、呼吸器内科…など)だが、整形外科医で特に目立つ気がする。2)との関係だろうか。

3.痛みは症状としてしか教育されない

 世界と比べても、痛み対策が遅れている日本では、痛みは原疾患の症状としか見られない。医学教育でも、痛みは疾患を診断するための症状として「急性痛」としてしかとりあげられない。「慢性痛」は蚊帳の外である。

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レントゲン、MRIが生む誤診

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