レントゲン、MRIが生む
慢性腰痛の誤診
痛み治療を専門とする医師たちの努力により、近年は、症例1でご紹介した「激痛の原因となる筋肉のコリ=トリガーポイント」の存在や、急性痛と慢性痛はそもそも違う、ということを知っている人が増えてきた。
しかし「まだまだ理解が足りない」というのが北原教授の実感だ。
「慢性の痛みとは、ずばり言うと、原因がよく分からない痛みです。原因が実に多様である、と言い換えてもいいでしょう。日常生活における習慣や癖、さまざまなストレスが原因になる場合があり、さらにそれらは複雑に絡み合っています。
ところが多くの医療関係者も患者さんも、『痛みには(ケガや病気などの)原因がある』という思い込みを持っており、その原因さえ分かれば、治すことができると思い込んでいます」
慢性腰痛に、単純明快な原因などありえないのに追い求め、切ったり貼ったり、骨格を整えたりするだけで「すぐに治せる奇跡の治療法がある」と思い込んでいる人があまりにも多い。
「例えば腰痛で整形外科に行くとすぐにレントゲンかMRIを撮りますが、レントゲンに写るのは骨の異常のみ。骨以外の原因で起こる痛みを判断することはできない。
また、腰痛のまったくない人でも、MRIで調べるとヘルニアや脊柱管の狭窄が見つかることは珍しくありません。これが誤診のもとになっています」
難治性腰痛の多くは、医師と患者双方の思い込みによる“誤解性腰痛”といえるかもしれない。
ちなみに症例1の男性は、現在も元気に活躍している、落語家の林家木久扇氏である。
横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニック診療教授。1987年、東京大学医学部卒業。医学博士。専門は難治性慢性疼痛。帝京大学医学部付属市原病院麻酔科、帝京大学医学部付属溝口病院麻酔科勤務後、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターに臨床留学。帰国後、筋肉内刺激法(IMS)を日本に紹介する。2006年より東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、2017年より横浜市立大学付属市民総合医療センターに移籍。IMS治療の第一人者としてテレビ、新聞、雑誌などでも幅広く活躍中。
>>続編は4月18日(金)公開予定です。



