単なる腰痛でも「難治性」と誤診されることが多い
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「慢性痛」の名医として知られる横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニックの北原雅樹教授のもとには、全国の病院から大勢の患者が紹介されて来る。その中でも“難治性”の腰痛患者は多いが、まったく「難治性」ではなく、単なる慢性腰痛が誤診されたケースの患者が多く含まれているという。その実態について解説してもらった。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

ほかの原因が隠れていた
難治性腰痛の症例

 北原雅樹教授のもとには、全国の病院から“難治性慢性腰痛”の患者が紹介されてくるが、なかには「ちっとも難治性じゃない」患者が多数いるという。本来「難治性」とは、いくら検査をしても原因が分からず、どんな治療も効果が見られない疾患を指すが、単に「担当医には診断がつかない」だけの“難治性”も多々存在するらしい。「患者さんが気の毒でなりません。と同時に、我々医師も、もっと勉強しないといけないし、情報発信が必要だと感じます」(北原教授)

 症例をいくつか紹介しよう。

【症例1】

 70代男性。腰、ひざ、下肢の痛みを訴えて来院。4年以上にわたり、複数の医療機関を受診するも悪化の一途をたどり、「車椅子に乗ってるのもやっと」の状態だった。

 職業は噺家。高座に上がれば一席終えるまでの数十分間は正座を続けなければならない、腰や膝に結構な負担がかかる仕事である。本人も若いころから腰痛持ちを自認していたが、4年前、大きな名跡を襲名したのをきっかけに多忙を極めるようになり、その負担がすべてかかってしまったのだろう、腰痛が悪化。手すりにつかまらなければ歩行もままならないほどになってしまった。

 他院から回ってきたカルテに書かれた診断名は「腰部脊柱管狭窄症」と「変形性膝関節症」。神経ブロック注射、消炎鎮痛薬の服用、ひざへのヒアルロン酸注射等の治療が行われてきた。