プレゼンの良し悪しは内容だけでなく
「話し方」によっても決まる
聴き手を惹きつける話の要素は大きく分けて2つ。話の内容と話し方です。本質から言うと、それは話の内容によって達成されるべきです。しかし、内容が素晴らしいとしても、話し方、いわゆるデリバリーが上手くいかないとせっかくの良い話も意味がありません。そこで今回は、内容以外の「話し方」にこだわって、工夫できるポイントをご紹介します。
【ノウハウ1】「私に話しかけている」と感じてもらう
まずは聴き手1人ひとりと丁寧にコミュニケーションをとることから始めましょう。プレゼンは基本的には1対1の会話の集積です。会場に聴き手が100人いるなら、100人と順番にマンツーマンの対話を行っていき、その集積として1対100のプレゼンが成立する、というのが理想です。
心理カウンセリング手法の確立に多大な貢献をしたアメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャースは、カウンセラーの基本的態度として「受容、共感、自己一致」の必要性を挙げています。詳しくは割愛しますが、要は相手の気持ちや考えをきちんと受け止め(受容)、それらを感じていると示すこと(共感)、それが自分の本心であり偽りがないこと(自己一致)。それがないと、相手は安心して心を開いてくれません。
私はキャリアカウンセラー資格を取得する際に、この考え方に初めて触れたのですが、プレゼンやスピーチの指導をする中で、これは人とのコミュニケーションにおいて聴き手・話し手関係なく最も重要なことだと、日々痛感しています。
人はどんなときでも自分のことを理解し、尊重して欲しい生き物です。それは自分が聴き手という立場であっても変わりません。多くの聴き手の1人として座っている立場であっても、口にしないだけで多くの感情を持っています。
たとえば、聴いているときの態度。頷きながら聴いている方はある程度は理解してくれているでしょう。一方、動かずに固まっている人はどうでしょうか。「感動のあまり微動だにせず聴き入っている」ということは、残念ながらあまりありません。「理解していない」「もうその話は良いから次に移って欲しい」「声がよく聴こえていないから反応しようがない」のどれかである可能性が高いです。話し手は、そういう心の声をまず察知し、それに対して生の反応を返していくことで、プレゼンを活きた会話とすることができるのです。