米国とロシアがベネズエラ情勢をめぐり対立する中、冷戦期以降で初めて、カリブ海地域が世界政治の焦点に浮上している。米国と同盟諸国は、ベネズエラの暫定大統領としてフアン・グアイド氏を承認し、ニコラス・マドゥロ大統領の退陣を迫っており、独裁者のマドゥロ氏と彼を支援するキューバ政府に対する制裁を強化している。グアイド氏は、ベネズエラ国民に対し5月1日のデモ参加を呼び掛け、これが同国史上最大のデモになることを期待している。しかしマドゥロ氏は、財政面で中国とロシア、軍事・安全保障面ではキューバとロシアの支援を受けて、一歩も引かない姿勢を示している。トランプ米政権にとって、西半球の「全ての道は(ベネズエラの首都である)カラカスに通ず」という状況だ。ベネズエラの統治体制と市民生活の崩壊が加速するのを放置すれば、難民は増加し、武器密輸業者と麻薬カルテルを潤し、ヒズボラのような勢力がこの地域の深部に浸透することを許すだけという結果になりかねない。その一方で、ビジネス界に友好的な政府の下で一定の安定状態が回復すれば、ベネズエラと周辺諸国の住民にとって歓迎すべき経済の回復が始まるだろう。そうなれば、テロ集団は武器と資金の多くを失うことになる。ベネズエラの石油生産が回復すれば、世界のエネルギー市場の安定に寄与し、ロシアとイランに対する米国の影響力が大幅に強化されるという点も重要だ。