(http://bnsn.jp/)
株式会社Bunshinが5月末にベータ版を公開した「bunshin」は、ユーザーの分身が日本中を勝手に旅する「放置系」ネットアプリだ。分身は日本中を勝手気ままに旅行し「各地で観光し、名産品を買い、土地のグルメを味わい、他のユーザーの分身と出会ったり、時にはバイトしたり」する。旅の様子は分身の書いた日記として、毎日ユーザーに報告されるそうだ。
昔の「ポストペット」でも、ペットは手紙をくれたり他のユーザーを訪れていたが、「bunshin」の目的は分身を愛でるというより、「時間も手間もかけずに、自由気ままな旅の生活を疑似体験する」ことで実際の旅行へのきっかけをつくったり、「分身同士の旅先での出会いが、ユーザー間のコミュニケーションに発展する」ことにある。
なおベータ版は単独のウェブアプリとして提供されているが、スマートフォン向けアプリやSNS向けアプリのリリースも計画中である。
ちなみに「放置系アプリ」とは、同社サイトの定義によると「ユーザーには最初の設定をしていただきますが、その後はシステム側で勝手に進行し、その結果をお知らせするタイプ」とのこと。よって「bunshin」も「ユーザーの時間をなるべく拘束しないことを目指し、放置系のアプリとして開発され」ている。
放置系という言葉はゲームアプリ界隈ではおなじみのようで、「放置系RPGアプリ」のように使われている。装備を整えて行き先さえ指定すれば、放置している間に戦利品が得られる(かもしれない)わけだ。
では、ゲームに疎く、擬似旅行やネットでのコミュニケーションにも興味のない向きにとって放置系アプリは無縁の存在なのか?
もちろん、そうではない。初期設定を行い、時間をかけずに結果を受けとる仕組みを仕事に応用できれば、時間短縮につながるはずだ。とはいえ日常生活は会議への出席、資格試験の勉強、夕食の買い物や調理などアプリに任せようのない仕事で埋まっている。
情報収集や分析といった作業は、アプリに任せる分野として有望だ。与えられたキーワードに従い、ネットから関連記事を集めてくれるアプリには需要があるだろう。ただし簡単ではない。キーワードの示す範囲が広すぎると集まる記事の数は膨大となるはず。同じソースを引いた複数のニュースサイトや個人ブログの情報を大量に収集されても困る。ブログなどの除外検索の仕組みは既にあるのだから、詳細な初期設定で解決可能かもしれないが、あれこれ条件設定するより自分で検索したほうが早いはず。
海外のサイトを巡回して記事を取捨選択、高精度な翻訳を行った上で届けてくれるアプリがあれば嬉しいのだけれど……。取捨選択はやはり人間の仕事である。人工知能の登場を待つしかないのだろうか。
(工藤 渉/5時から作家塾(R))