どうやら世の中は“英語ブーム”のようだ。終戦直後、『日米会話手帳』が3ヵ月で360万部のベストセラーになった頃が第一次、東京オリンピック~大阪万博を第二次とすると、今は第三次英語ブームといえるかもしれない。
ただし、前者2つのブームと異なるのは、今回が“ビジネス英語ブーム”である点だ。人材紹介大手のインテリジェンスが2005~12年の20万件に上る求人を調べた結果、2012年の初級レベル(簡単な読み書きや会話が可能、TOEICテスト500点程度)の英語力を条件とする求人の割合は、実に61.0%にも上る。僅か4.2%だった05年に比べると、その急増ぶりは明らかだ。
特に08年からは飛躍的に伸びている。同社は、「リーマンショックの影響を受け、国内マーケットの需要に限界を感じた各企業が、販路や販売拠点の海外展開に本腰を入れ始めたため」と分析する。
ビジネスの現場で英語を使える人材を求める企業が増える中、実際のビジネスマンの英語力はどうか。インテリジェンスが22~34歳のビジネスマン5000人に聞いたところ、初級レベルの英語力があると答えた人は23.8%。企業のニーズとは大きなギャップがある。
今後、日本企業の海外展開は加速していくことが予想される。10年には楽天とファーストリテイリングが英語社内公用語化を発表した。シャープや三井住友銀行など他の大手企業も力を入れている。ビジネスマンにとって英語は、今までのような「しゃべれたらいい」ではなく、「しゃべれなければ生き残れない」ものに変わりつつある。
危機感は現象として表れている。TOEICの受験者数は、11年に227万人に達し、前年より約3割も増えた。一方、英会話スクールのベルリッツでは、中上級者向けのビジネス英会話講座「ビジネス・コミュニケーションズ・スクール」を拡充するとともに、初心者向けビジネス英会話プログラム「ビジネス・ベーシックス」も開講。「2年くらい前から、個人の問い合わせや申し込みが急激に増えている。以前は、製薬業、製造業の受講者が多かったが、今はIT、小売業のビジネスマンも多く受講するようになった。裾野が広がっている」と、同社広報担当の中川淳氏は指摘する。
最近では大学生の受講者も増加しているという。昨今の企業ニーズに対応した動きだろう。今後は英語力のある新入社員が増えていく可能性がある中、現役ビジネスマンの焦燥感から来る英語熱は、ますます高まっていくかもしれない。
ところで、インテリジェンスでは、Web上で「DODAグローバル診断」を無料で提供している。英語力だけではなく、ビジネスの進め方や考え方を問う17の質問に答えるだけで、総合的なグローバル力がその場で判定される。自分がどれほど海外で通用する人材なのか、気になる人は一度試してみるとよいだろう。
(大来 俊/5時から作家塾(R))