スマートフォンのアプリケーションには、当然ながらコミュニケーションを支援するものが多い。無料通話やチャットができるもの、不特定多数の人と出会えるものなど、様々だ。ランダムに選ばれた相手と一期一会の出会いを楽しむ『斉藤さん』には「ここまできたか!」と、大学生が同じ講義をとっている相手を探す『すごい時間割』には「この手があったか!」と驚かされた。
だが初対面の相手、よく知らない相手と出会って、いったい何を話すのか?たとえば、『すごい時間割』のユーザーなら大学の話題でしばらく間が持つのだろうが、その次はどうするのか?
その方面に不安がある人は、そもそもこのタイプのアプリには手を出さないのだろう。話題など個人で見つければいいのだし、余計なお世話でもある。だが「出会い」に手を貸すアプリがある以上、話題づくりに特化したアプリもあっていい。
――と思って探してみたらあった。日産自動車が先頃リリースしたAndroid用のアプリ『ドライブトーク』は、「車内で話すことがなくなり、シーンと静かになりそうな時に使ってください。画面に表示された話題をネタに、盛り上げていきましょう」とのこと。ドライブ以外の場面にも使える話題提供アプリだ。
まず、「安全を守るため、ドライバーの方は運転中に使用しないでください」とあるが、これは当然。「本アプリは、あくまでも場の雰囲気を盛り上げることを目的としており、お友達や恋人を新しくつくることを目的とするものではございません。人間関係の構築は、ご自身にて、実行頂きますようお願いいたします」との但し書きは、半分は冗談、半分は「いわゆる出会い系とは無関係」との宣言だろう。「あなた本来の魅力を損なう恐れがありますので、本アプリの使いすぎには十分ご注意ください」は、ご愛嬌といったところ。
トークつながりなら、昨年キリンビールからリリースされた『カンパイトーク』というのもある。こちらは潔く、「飲み会」「パーティー」「結婚式の2次会」「異業種交流会」などで初対面の人との会話が苦手なアナタ、に向けたアプリと謳っている。Twitterアカウントが必須だが、これはツイートから共通の話題を探すため。「こんなアプリがあるよ」とこれ自体が話題となるので、使用の上での照れ臭さもない。
「そこまでして話題を探さなければならないのか?」との声もあるだろうが、それほどの手間ではないし、話題がないのは確かに苦痛である。アプリに頼るのもアリだと思う。問題は、同じ相手に繰り返し使うのは難しい点だ。場面を変えて継続して使用するのかどうかも、微妙である。
だが、件の『ドライブトーク』には、「面白い話が聞けたらFacebookやTwitterで友人に拡散」や、「アプリを使えば使うほど、アナタ好みに話題が充実」などの機能がある。さらに同社の「ドライブトーク講座」には、「旧知の友人との再会」「カタブツの部長との社内会議」などの使用例も。どうやら継続しての利用が考慮されている。上司相手にこのアプリを(その場で)使用するのは無茶だと思うが、予習には使えるだろう。
(工藤 渉/5時から作家塾(R))