ただ、今年は5年に一度の公的年金の財政検証の年だが、政府は検証結果の公表を参院選挙後に遅らせるとの憶測がある。

 また、所得代替率を引き上げるためには、前回の制度改正時でこれ以上上げないことになっている年金保険料を上げる、あるいは支給開始年齢を遅らせるといった、国民からの反発が大きな施策が必要だ。政府から年金財政への資金投入を増やすことも考え得るが、これも長期的には増税につながる。

 現在、野党側に、こうした点に関する試算は無さそうだ。だとすると、所得代替率は「隠すな。早く出せ!」という批判の的にはできても、具体的な方策を伴う政策上の「争点」とすることはできそうにない。

それでも年金の改善点を探すなら

 現在の野党には、年金を選挙の争点とするだけの十分な準備がない、と筆者は感じているのだが、現在の年金制度が完璧なわけではないし、年金制度が議論の対象になるのはいいことだ。

 現在の公的年金制度に関して、改善点の候補がないか探してみよう。

 まず、高齢者が働くことを阻害する影響を持つ在職老齢年金制度は、もはや「不正義」を理由に、直ちに全廃すべきだろう。財源の考慮等から「全廃」でなく「縮小」となると、縮小しても同様の問題が残ることに加えて、少しでも無い方がいい、制度的な複雑さを残すことになる。

 ただし、この問題は既に与党が認識していて、「廃止ないし縮小」の方針を示している。この改正は、与野党協力して早急に進めてもらいたい。

 議論を呼びそうだが、年金制度の趣旨を活かしつつ、高齢者の就労を促進する意味では、支給開始年齢の引き上げを行うべきだろう。現在、65歳支給開始が標準だが、これを70歳程度まで引き上げて、その上で支給額を手厚くし、年金本来の機能である長寿のリスクへの対応力を強化したい。

 この点に関しても、与党は支給開始繰り下げの範囲を現在の70歳から75歳まで引き上げることを提言している。制度的には60歳から75歳まで支給開始年齢を選択できるようになる。標準的な支給開始年齢を70歳に引き上げる布石ともみえるが、選択の範囲が拡がることは歓迎できる。この点についても、野党側に異議があるとは考えにくい。

 現在、働きたい高齢者の労働参加を促進する政策が進んでいることとの整合性を確保する上では、確定拠出年金の拠出可能年齢の引き上げも急務だろう。「働きたい人が70歳まで働けるように」と言っているのだから、一気に70歳まで持っていくことが望ましい。