老後資金「2000万円不足」問題で
政府関係者が口にできないこと
金融庁の金融審議会が提出した「老後資金が2000万円不足する」という報告書が、国会で問題になっています。麻生金融担当相はこの報告書の受取りを拒否。批判を受けた金融庁は、報告書の修正も検討しているそうです。要するに、まだ正式ではない報告書に書かれた内容にそのような記述があっただけで、政府の見解ではないという公式発表によって、騒動は落ち着きつつあります。
さて、思いのほか波紋を広げてしまった観のある今回の問題について、「本当に悪いのは誰か」を考えてみたいと思います。
今回の件で何が問題なのかをひとことで言うと、「この報告書がたぶん正しいこと」が問題なのです。本当は、今の50代よりも若い世代が晩年を迎える頃に、そういう時代が実際に来る可能性は高いです。たぶん、政治家も官僚もみんなそれをわかっていて、でも口にしなかった。今回、こっそり審議会が口にしてみたら騒動になった。それが今回の問題なのです。
では、老後資金はなぜ不足するのか。それはおそらく、年金制度が破綻するからです。今はぎりぎりで後期高齢者の生活を支えている年金制度が、じきにもたなくなる。だから50代以下の若い世代は、働けるうちにお金を稼いで、老後資金を2000万円くらいは用意しておいたほうがいい。そういうことなのです。
私がこれから述べることは、まっとうな政府関係者なら口に出せないと思います。かつてテレビのバラエティ番組で「地下クイズ王」になった経験を持つサブカル経済評論家の私だからこそ言える、独自解釈でわかりやすい解説を展開させていただきます。その本筋は、おおむね間違っていないはずです。
1959年から発足した国民年金制度とは、そもそも働く若い世代から納付させた年金保険料の大半を、そのまま引退した高齢者世代に年金として給付するために設計されました。若い世代が納めたお金をそのまま高齢者に分配するという仕組みの基本構造は、今でも本質的には変わっていません。
そのような制度は、1960年代のように人口ピラミッドで若者の方が多い時代には成り立っていました。しかしこれから先の2030年代、団塊の世代が80代を迎えて人口ピラミッドが完全に逆転するような時代がくれば、制度が破綻することは誰でもわかります。