最近メディアで、この顔を見かけない日はない。誰かと言えば、ナグモクリニック総院長で、乳腺専門医の南雲吉則氏だ。写真全体の雰囲気、肌ツヤ、そして豊かな黒髪……。40代? いや30代とも見まごうこの御仁、著書を手にとり、実は御年56歳と知って驚く。
南雲氏が一躍名を馳せたのは、『50歳を越えても30代に見える生き方』(講談社+α新書)、『ゴボウ茶を飲むと20歳若返る』(ソフトバンククリエイティブ)といった一連の著書だ。
そして、今年1月に発売された『「空腹」が人を健康にする――「一日一食」で20歳若返る!』(サンマーク出版)は、刊行からわずか5ヵ月で30万部を突破。センセーショナルなタイトルと、同氏のいかにも若々しい帯写真が、絶妙にレゾナンスした形と言えよう。
正直に言えば、筆者は同書を開くまでは、いわゆる「トンデモ本」の一種かと、うがった見方をしていた。しかし読み始めてすぐに誤解は解けた。一日一食が身体にいいのは、人間の生命力をつかさどる「サーチュイン遺伝子」を作動させやすくするため。この遺伝子は体の傷んだ部分を修復するが、一番効果的に働くのは空腹時であるという。あらゆる健康法を試し、食事法を模索していた南雲氏が、自身の実体験の中で発見したのが、この「一日一食」というベストの食事法だそうだ。
そして彼の持論は、医学的に見ても人間の歴史から見ても、実に理にかなったものだという。人類が地球上に誕生して約17万年、このとてつもなく長い年月はそのまま、人類が飢餓や寒さと闘ってきた歴史でもある。住んでいる地域にもよるが、人間が三食きちんと食べられるようになって、まだ数十年と経っていない。つまり人類の身体は、飽食に慣れるほどまだ進化していないのだ。
この南雲氏の考えは、古くから別の著名な医師や栄養士によっても提唱されてきた。『空腹力』(PHP新書/2007年)は、ユニークな食事療法で知られる医師・石原結實氏が、「現代人の病気の多くは、食べ過ぎが原因」と警鐘を鳴らした一冊。
また、管理栄養士の幕内秀夫氏は、自著『粗食のすすめ』(新潮社/2003年)の中で、真の健康のために日本の風土に根差した伝統食を推奨している。これらのメッセージから、飽食や欧米型の食生活が、いかに健康に悪影響をもたらすかがわかる。
そして、件の南雲医師の目指すところは、非常にシンプルだ。「若さ、美しさといった外見は、健康状態の表れ」という考えのもと、(1)肌がつやつやである、(2)ウエストがくびれている……というわかりやすい指標を掲げ、人間が原点に立ち返るメリットを唱えているのだ。
ビジネスマン諸氏は、「たかが見た目」「中身で勝負」と侮ることなかれ。ぶよぶよとしたメタボ体型は、体内の不健康な状態をそのまま映し出す鏡でもあるのだ。そんなわけで、健康やダイエットについて真剣に考える向きは、「一日一食」健康法を試してみてはいかがだろうか。
(田島 薫/5時から作家塾(R))