私たちが毎日当たり前のように食べている米飯やパン。実はこれらの「主食」を控えれば、肥満や糖尿病などさまざまな生活習慣病が予防・改善できます。江部康二医師が理事長をつとめる京都・高雄病院における10年以上の経験をもとに、画期的な食事療法「糖質制限食」の効果と実践法を3回にわたってご紹介します。
ふだんの食生活を変えることが
健康を手に入れる一番の近道
私たちの食生活は、体に相応しいものなのでしょうか?
江部康二
医師、高雄病院理事長。1950年生まれ。京都大学医学部卒業。高雄病院での臨床活動の中から、肥満・メタボリックシンドローム・糖尿病克服などに画期的な効果がある「糖質制限食」の体系を確立。ブログ「ドクター江部の糖尿病徒然日記」を発信中。
実は、現代人が毎日摂っている食べ物は、人類本来の食生活とはかけ離れたものになっています。そして、その事実こそが、さまざまな生活習慣病がこれだけ増えたことの根本要因なのです。いまの食生活を、人類本来の食生活である糖質制限食に変えることで、私たちは簡単に健康を手に入れることができるのです。
糖尿病など生活習慣病の患者さんが外来診療に来られると、私はまず食事療法(糖質制限食)だけで症状の改善を目指します。それだけではうまくいかないときに、初めて薬の内服を考えます。日本人は薬好きで有名な民族ですが、多くの生活習慣病が薬なしの糖質制限食のみで改善します。実は、栄養士や医師が推奨するカロリー制限食(糖質60%、脂質20%、タンパク質20%)は、人類本来の食生活からみると最悪のバランスなのです。
それでは、高雄病院で推奨している「人類にとって最高のバランスの糖質制限食」とは、いったいどのような食事療法なのでしょうか?
病気・症状を改善する「糖質制限食」は
どんな食事療法なのか?
現在、糖尿病専門医の間では、食後高血糖が大きな問題として注目されています。従来は空腹時血糖をコントロールしてきたのですが、それだけでは不充分で、食後血糖をできるだけ低くおさえることが大切だというのです。その理由は、食後高血糖が心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を引き起こす危険因子として確立されたからです。
ところが、日本で常識とされている糖尿病の食事療法は、こうした実態に応えられるものになっていません。カロリー制限を重視した炭水化物(糖質)中心の糖尿病食というのは、血糖値をおさえるどころか、むしろ上昇させてしまうからです。
米国糖尿病協会(ADA)によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、脂質とタンパク質は血糖に変わりませんが、糖質は100%血糖に変わります。また糖質は、摂取直後から血糖値を急上昇させて、2時間以内にほとんどすべてが体内に吸収されてしまいます。これらは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質です。