ドイツ銀行の戦略転換は出遅れたが、理論的には賢明な内容だ。だが実際には非の打ちどころのない実施が必要のため、中途半端では十分な効果が得られない可能性がある。ドイツ銀行業界最大手である同行は7日、抜本的な経営再建策を打ち出した。株式トレーディングをはじめとする海外の投資銀行事業の主要業務を廃止するほか、不良資産の受け皿になる「バッドバンク」を設立し、同事業の資産の約2割を移管して処分する予定だ。規模を縮小し、大企業やドイツの消費者の金融ニーズに応えるという従来の中核事業に立ち返るのが基本構想だ。ドイツ銀の痛ましいほどに低い利益率の理由の一つは、規模で大幅に上回る米同業他社に対抗できない海外投資銀行事業の赤字だ。新戦略は、この問題への対策になるだろう。規模と情報技術(IT)が物を言う株式トレーディングは、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスによる寡占が進んでいる。