夏季号自体も売れ行きがよく、さらに今回はそれを大きく上回った。となれば、リニューアルがヒットにつながったと考えるのが自然だろう。ということで、坂上さんにリニューアルの詳細を聞いていきたい。

決めた特集主義の復活
「韓国・フェミニズム・日本」

“文藝再起動”と銘打たれた夏季号
“文芸再起動”と銘打たれた夏季号

『文藝』の編集部は、現在3人の部員で構成されているという。坂上さんが編集長に就任した際、部員構成も大きく入れ替わった。このとき、売り上げが厳しい現状をふまえ、これまでの路線から大きく反転させようと話し合ったという。大切にしたのは「今の時代に、ゼロから文芸誌を作るならどうするか」という視点だ。

 そうして行われたリニューアルは、大きく2つの特徴があった。「特集主義の復活」と「デザインの一新」だ。まずは特集主義の復活について触れたい。

「もともと『文藝』では、その号ごとに特集を組んでいましたが、この4~5年は特集をなくして小説の作品をメインとして誌面構成することに特化していました。リニューアルでは変化にこだわり、特集を復活。毎号コンセプトを立てる形にしました」

“文芸再起動”と銘打たれた夏季号では「天皇・平成・文学」、そして今回の秋季号では「韓国・フェミニズム・日本」という特集をたてた。

「韓国とフェミニズムを選んだのは、最近の出版業界の動向が影響しています。大きかったのは『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳/筑摩書房)が、日本で10万部を超えるベストセラーになったこと。海外文学、しかも今まであまり日本で馴染みのない韓国文学でこれだけのヒットは衝撃でした」

 さらに、この他にも韓国文学には新鮮で面白いものが多かったという。また、河出書房新社からも韓国の小説が近年いくつか出ており、その内容の充実度や反響の良さもこの特集を後押しした。

「フェミニズムについても、『82年生まれ~』では重要なテーマになっています。そして日本でも、近年フェミニズムにまつわる議論が盛んなことから、『韓国・フェミニズム・日本』という特集にした形です」