ジャック・ウェルチやラタン・タタのように、秘書を通すと日程調整に途方もない時間がかかる人物でも、メールなら本人に直接届く。「今度、ニューヨークに行くから食事をしようか」とメールを送るだけで用が足りるわけです。

 知り合いの中国共産党幹部から「インドのIT経営者を紹介してほしい」というメールが送られてきたことがあります。僕はインドのIT経営者に紹介のメールを送り、同時に共産党幹部にもコピーを送信する。それで僕の「紹介」は終わり。あとは2人でやりとりをしてもらいます。

 たったこれだけの手間で、中国共産党の幹部には喜んでもらえたし、彼を紹介することでインドのIT経営者にとってもメリットになった。双方の役に立てたというわけです。

 もちろん、頼みごと、頼まれごとが失礼にならない程度の距離は常に保っておかなければなりません。これもまた、メールは都合がいい。普段、なかなか会う機会がない人でも、メールで接触を絶やさないようにしておけば、親近感が増すものです。何年も会っていない人でも、たまに「ロンドンに寄るから会いませんか」とメールすれば、喜んで会いに来てくれるし、話も弾む。

 僕は年賀状3000通、クリスマスカード300通はやりとりしているけれど、これは「虚礼」ではありません。先日も(ナイキ創業者の)フィル・ナイトから「近くに来ることがあったら寄ってくれ。また会いたい」と手紙をもらった。実際に会わなくても、手紙やカードをもらえば、やはりうれしいものです。

電子メールによる人脈構築・維持のテクニックには、中間管理職も見ならうべき点がある。人脈と呼ぶに値する人たちは繰り返しになるが忙しい。メールでのやりとりは礼を失するどころか、相手にとっては望むところなのだ。ただし、メールにも最低限の礼儀は必要。時候の挨拶などは省いて文面を簡潔に。そして、「宵越しのメールは持たない」。重要なメールには大前は24時間以内に必ず返事を出すことにしている。

コミュニケーションの基本は相手の
「心情」を思い、「立場」に立つことだ

 人脈というと、「自分の役に立ってくれる人」という認識をしているビジネスマンが大多数だと思いますが、そんな考え方では長続きしません。いつも頼みごとだけするのでは、じきに相手にされなくなります。