GSOMIA破棄の背景には、韓国の国内政治の問題がある。ホワイト国除外問題に対する与党内の強硬論に同調するもので、さらに文在寅(ムン・ジェイン)大統領側近で法相への起用が決まったチョ・グク氏のスキャンダルから目をそらすため、といった要素が指摘できる。だが、韓国政府が自国の安全保障上の利益を損なって、ここまで政治的に行動するとは、政権外の人は誰も考えられなかった。

破棄で利益を得るのは
北朝鮮、中国、ロシア

 GSOMIA破棄を受け、直接的な利益を得るのは北朝鮮だ。日韓の足並みが崩れれば、米国の北東アジアにおける影響力そのものを弱める。また北朝鮮ほど直接的な関係ではないが、中国とロシアもこの地域で長期的に影響力を高めようと考えており、米国の同盟ネットワークが弱体化することは歓迎だ。北東アジアの安全保障関係が流動化する現状は、どのように打開できるのだろうか。

 直近のタイミングとしては、10月の天皇即位礼や年内に予定される日中韓3ヵ国首脳会談といった機会に、日韓が何らかの交渉を持つ可能性がある。だがこういったタイミングで話したところで、何について合意できるかは極めて不透明だ。韓国政府はGSOMIAの再締結を材料にホワイト国などの問題を議論したいだろうが、日本政府がその交渉を受ける余地はないだろう。

 とはいえ日本は直近の日韓関係悪化局面において、国際世論には自国に対して厳しい見方が散見したことを忘れてはならない。輸出管理においては韓国企業の管理が甘かったという事実を明確に示し、その上で報復措置としてGSOMIAを破棄するのは筋違いであると、対外的に分かりやすく主張し続ける必要がある。

 そして問題打開の頼みの綱は、米国の仲裁だ。北朝鮮の核ミサイル脅威が依然として存在する中、北東アジアの安定において日米韓の協力関係が重要である。この事実を米国が韓国に対して強いメッセージとして出すことには、一定の効果が期待できる。ただ韓国の内政問題と日韓の対立の巻き添えになり、すでに非常にいらだっている米国の動向は、今のところ定かではない。