「北」と「曺長官」への想いを胸に
国連総会へ赴いた文大統領
文在寅大統領にとって、今回の訪米は後ろ髪を引かれる思いでの訪米だったはずだ。
現に文大統領が出国した翌日、検察は曺国法務部長官の自宅の家宅捜索に踏み切った。これは文大統領が国内にいない絶妙なタイミングだったといわれている。中央日報は、曺長官夫妻の容疑の相当部分が立証されたと報じている。
曺長官の夫人、チョンギョンシム東洋大学教授が、PCのハードディスクを搬出するなど証拠隠滅を試みた状況も、家宅捜索決定に影響を及ぼしたという。チョン教授は韓国投資証券のプライベートバンカーのキム某氏にハードディスクの交換を依頼したとの供述が出ており、曺氏も夫人に協力している同氏に謝意を表したという。
さらに、曺氏の息子に対する、ソウル大法学部の公益法人人権法センターのインターン活動証明書の虚偽発行には、曺氏自身が関与しているとみられている。これが立証されれば、曺氏が私文書偽造をしたことになる。
文大統領は「明確な違法行為が明らかになっていない」として曺国氏の法務部長官任命を強行した。それは、議会、行政、司法の三権を抑えている文大統領が、唯一自身に抵抗する機関である検察を改革するため曺国氏を法務部長官に据えたいという思いが強かったからである。
それに加えて、文大統領はこれまで、政治や経済、外交などのあらゆる面で強引な手法で権力を行使してきたため、曺国氏の法務部長官任命で譲歩すれば、反対派を勢いづかせ、文大統領に逆らう動きを加速させかねないと考えたからだろう。しかし、その法務部長官が逮捕される事態となれば、これは最悪の事態であり、文大統領にとっての打撃は計り知れない。
そのような事態が仮に起こったとき、文大統領を多少なりとも支える可能性があるのは北朝鮮との関係促進である。その意味で、今回の訪米は米朝会談の促進を促すとともに、国際社会に対して北朝鮮への協力を呼び掛ける重要な機会であった。