曺氏の法相起用を決めた9月9日の前日、7、8両日の週末は大統領府にこもり熟考したと伝えられる。

 韓国の知人たちにその時の様子を尋ねると、悩みは大きかったようだ。

「あまりに曺氏の世論受けが悪いので、悩んでいる」
「曺氏の訴追を目指す検察を抑え込めるかどうか、慎重に判断している」
「曺氏を起用すれば世論は反発するが、起用しなければ検察に対する敗北が浮き彫りになってレームダックになる。どちらがよりマシか考えている」

 などと話していたという。

 知人たちが挙げた「文在寅氏の思考論理」で共通していたのは、文政権の支持がどうなるかという一点だった。

 来年4月の総選挙、さらには2022年春の次期大統領選をにらんだ計算ということだった。

 曺氏の法相起用を決めたことで、文政権の支持率はどうなったか。

 結果は興味深いものだった。

 韓国の世論調査を見てみると大体、曺氏の法相起用を批判する世論が5~6割で、賛成する世論を10~20ポイント上回っている。

 その一方で、文政権を支える与党、「共に民主党」の支持率は相変わらず40%前後を占め、最大野党「自由韓国党」の30%前後を引き離している。

 文政権の支持率も40%台後半を維持している状態だ。

 この数字をみると、韓国の人々は曺氏の起用に怒ってはいるものの、それが、「共に民主党」などの進歩(革新)勢力への批判につながっていないことがわかる。

 2017年秋、側近が、娘をソウルの名門、梨花女子大へ不正に入学させた同じような疑惑が噴出した後、30%程度あった支持率がみるみる減って1桁まで落ち込んだ朴槿恵前大統領のケースとは極めて対照的だ。

保守派支持は増えないと判断
朴前大統領への根強い批判

 文大統領は、「曺氏を起用しても、野党の保守勢力が、支持率を上げて利益を得ることはない」という見極めがあったから、正面突破を図ったのだろう。

 もちろん、曺氏自身の疑惑が拡大すれば、今後の事態はどう転ぶかわからないが、文大統領は少なくとも現時点で「保守勢力が進歩勢力を上回る支持を得て、政権を揺るがすような政局にはならない」と読んでいるようだ。