「上にへつらってまで
出世する必要はない」
妻の言葉で信念を貫けた
私を支えてくれたのは、5歳年上の姉さん女房の節子です。
いつも「上にへつらってまで出世する必要はない」と言ってくれたことで、自分の信念を貫くことができました。
破綻してから20年間、マスコミの取材を断ってきたのは、節子が強く反対したためでした。
拓銀の破綻前後は昼夜を問わず、マスコミが自宅に押しかけましたが、彼女は体を張って私を守ってくれました。
その時の嫌な思いが忘れられなかったからでしょう。
そんな節子も2017年5月に先立ちました。
私たちには子どもはおりません。
破綻から20年が過ぎて、自分にけじめをつけるため、この『最後の頭取』を書くことにしました。
戦後、銀行行政は大きく変化しました。
横並びの護送船団方式が、バブル崩壊と金融危機を経て、自由化へと流れてきました。
銀行員という職業を通じて、私は昨日までの常識やルールが一夜にして変わる場面に何度も遭遇しました。
心臓が凍るような修羅場も経験し、多くの失敗も重ねました。
これから皆さんも、形は違えど、時代の転換期に直面することがあるかもしれません。
そんな時、どうすればよいのか。
私の体験記から、何かしらの教訓を見つけて、自らの人生に生かしていただければ幸いです。
【次回に続く】