川崎フロンターレ優勝YBCルヴァンカップ初優勝をもぎ取った川崎フロンターレ Photo:JIJI

歴史に残る死闘を制して、川崎フロンターレがYBCルヴァンカップ初優勝をもぎ取った。初タイトルをかけた北海道コンサドーレ札幌との間で、10月26日に埼玉スタジアムで行われた決勝は3-3のまま延長戦でも決着がつかず、もつれ込んだPK戦で劇的な幕切れを迎えた。長丁場のリーグ戦を連覇しながら、一発勝負となるカップ戦決勝では天皇杯を含めて5戦5敗。いつしかシルバーコレクターと揶揄された、屈辱の歴史を覆した要因と価値を振り返った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

決勝でゴールできない、勝てない
「シルバーコレクター」との揶揄も

 まとわりついてきた2つの呪縛を振りほどいた。決勝戦でゴールできない。決勝戦で勝てない。川崎フロンターレとして5度目、個人としては4度目の挑戦で国内三大タイトルのひとつ、YBCルヴァンカップを初めて制した大黒柱、MF中村憲剛が感無量の表情を浮かべた。

「ずっと憧れてきた光景でしたからね。勝つか負けるかの一発勝負で、今までは下から上を眺めてきた中で、上でしか分からない光景があると思ってきましたけど、やはりリーグ戦の時とはまったく違いましたね。勝った者しか味わえない景色でした」

 埼玉スタジアムのメインスタンドに設けられたロイヤルボックスに立ち、金メダルを誇らしげに首からぶら下げながら、雄叫びとともに優勝トロフィーを天へ掲げる。PK戦の末に北海道コンサドーレ札幌を下した10月26日のルヴァンカップ決勝が、フロンターレの歴史を再び変えた。

 前身のヤマザキナビスコカップ時代から、一発勝負で行われる決勝で勝てなかった。2000年大会を皮切りに、2007年、2009年、まだ記憶に新しい2017年大会とすべて無得点で90分間を終えて、順に鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、FC東京、セレッソ大阪の引き立て役に回ってきた。

 2017年の元日には、三大タイトルのひとつである天皇杯全日本サッカー選手権大会でも決勝戦へ初めて駒を進めたが、延長戦の末に1-2でアントラーズに屈した。一発勝負に弱いというレッテルを貼られ、いつしか「シルバーコレクター」と揶揄されるようになった。