川崎フロンターレが史上5チーム目となるJ1連覇を達成した。クラブの悲願だった昨シーズンの初優勝と比べると、長く金看板としてきた圧倒的な攻撃力に加えて、リーグ最少失点を誇る堅守も身にまとったことがサンフレッチェ広島を逆転しての戴冠を導いた。鬼木達監督の下で「攻守両面で隙のないチーム」を追求して2シーズン目。フロンターレひと筋で16年間プレーし、38歳になった今もなお成長を続けるレジェンドにして大黒柱、MF中村憲剛が残してきた機知に富んだ言葉の数々に、遅れてJリーグに参戦したフロンターレが進化を遂げてきた理由が凝縮されている。(ノンフィクションライター 藤江直人)
チャンピオンとして迎えた今シーズン
一時13ポイント差の広島を逆転して優勝
38歳の誕生日を迎えた10月31日を境に、川崎フロンターレひと筋でプレーして16年目になるレジェンドにして大黒柱、MF中村憲剛はこんな言葉を幾度となく残してきた。
「こんなに幸せな38歳はいないと思う」
スタートから四半世紀を迎えたJリーグの歴史上で、5チーム目となるJ1連覇を果たした10日のセレッソ大阪との明治安田生命J1リーグ第32節後にも、中村は同じニュアンスの言葉を口にしながら感無量の思いに浸った。機知に富んだ語録を振り返れば、37歳だった1年前にはこう語っていた。
「これでいろいろな呪縛から解放されそうな気がする。フロンターレの未来につながるんじゃないかと」
忘れもしない昨年12月2日。J1最終節で鹿島アントラーズに勝ち点で並び、得失点差で逆転してクラブ悲願の初タイトルを獲得。ホームの等々力陸上競技場のピッチに突っ伏し、尽き果てるまで歓喜の涙を流した直後に、晴れやかな笑顔とともに残した名言が現実のものとなった。
一時は勝ち点で13ポイントもの大差をつけられ、独走を許していたサンフレッチェ広島を焦ることなく追走。白星を重ね続けることで重圧をかけ、メンタル面からも相手を大失速させる状況を作り上げ、勝負をかける終盤戦になって一気に追いつき、2試合を残して挽回不可能なポイント差にまで広げてみせた。
「昨シーズンの優勝とは全然違うというか、チャンピオンとして臨むシーズン、勝って当たり前だろうと思われながら臨むシーズンの苦しさを感じました。そうしたものをはねのけてここまでやってきたことに対しては、自分たちの力を評価していいと思う」