中国本土から香港を訪れる観光客にとって、町を象徴するビクトリアピークやそこからの眺め、家族連れにやさしいディズニーランドは長年人気スポットとなっている。そして彼らがもう1つ頻繁に足を運んできたのが、何の変哲もない大手保険会社のオフィスだ。
ここ数カ月の香港への観光客の急減で、AIAグループ(友邦保険)や英プルーデンシャルをはじめとする大手保険会社は実入りのいい販売チャンネルを失っている。それら香港に拠点を置く企業は、保険や貯蓄商品を本土からの中国人客に販売し、大きな利益を上げてきた。
だが数カ月にわたる反政府デモと社会不安を受け、多くの中国人観光客が香港への旅行を取りやめたり延期したりしている。アジア全域で事業を行うAIAは10月下旬、同社最大の市場である香港の新業務価値(新規保険契約の価値)が7-9月期(第3四半期)に前年同期比で2桁減少したと明らかにした。同社はその主因に中国本土からの訪問客向け業務の減少を挙げた。香港への訪問客全体も7~8月に同様の減少を見せている。
香港政府観光局によると、デモ隊と警察の衝突が激化した8月は中国本土からの訪問客が前年同月比で42%も落ち込んだ。直近のデータである9月は同35%減となった。
香港の保険会社は、主に米ドルや香港ドル建ての保険契約や年金プランを売りに中国本土からの訪問客を引きつけてきた。その多くは年の経過と共に価値が上がる貯蓄や投資型の商品で、中国人客はそれを人民元の低下から資産を保護する手段の1つとみなしている。