自分の無力さを痛感する、挫折にも似た体験が、人生を大きく動かしたのだ。

Phtoto by M.S.

 福田先生が教授に就任して10年、同大の循環器内科は、再生医療に限らず、幅広い分野で目覚ましい研究成果をあげる一方、臨床においても、ハイレベルで体への負担が少ない治療を積極的に採り入れ、日本の循環器医療をリードしてきた。

 数々の功績と共に、先生が誇りに感じているのが、共に研究する若い医師たちだ。

「彼らにはいつも『ゲレンデのスキーをしちゃいけない、新雪のスキーをしなさい』と言っています。ゲレンデのスキーは楽だけれども、描いたシュプールは残らない。誰もやっていないことをやるのはとても勇気がいることです。スキーで新雪を滑るときのように、下にブッシュが隠れているかもしれないし、スキーが刺さって倒れるかもしれない。ゲレンデよりも何倍も大変です。でも、滑った後のシュプールは必ず残る。若い人たちには、そんなふうに努力した成果が後の世で跡に残るような生き方をしてほしい。僕の座右の銘でもあります」

◎福田恵一(ふくだ・けいいち)
慶應義塾大学医学部循環器内科 教授 。1983年慶應義塾大学医学部卒業。90年慶應義塾大学医学部 助手、91年国立がんセンター研究所 細胞増殖因子研究部、92年ハーバード大学ベスイスラエル病院 留学、95年慶應義塾大学医学部 助手、99年同講師、2005年同再生医学教授を経て、10年から現職。2015年心筋再生医療の実用化を自ら牽引するためHeartseed株式会社を設立、代表取締役CEOに就任。