インド太平洋構想に焦点を合わせると、大西洋をはさんだ米欧の同盟関係はどのように見えるだろうか。それは欧州諸国にとって、ドナルド・トランプ米大統領の予測不能な外交よりも悩ましい問題だ。冷戦時代は、欧州をソ連の脅威から守ることが米政府の最優先外交課題だった。それは、米国が欧州に部隊を展開することだけを意味するのではなかった。米政府は欧州の意見を真剣に受け止め、欧州勢と深く関わり、同盟の結束を維持するために欧州と合意を結び、譲歩に前向きの姿勢を示した。こうした状況の一部は明らかに変化した。次の米大統領は、トランプ氏の常識を無視した直感外交や、ナイジェル・ファラージ氏のようなブレグジット支持者やハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相のような反EU派への親近感を共有することはないかもしれない。しかし、次期米大統領は、欧州のさまざまな首相や大統領、委員や高官との外交交渉の儀礼的なセレモニーに関心を示すだろうか。日韓対立の解消や台湾海峡での中国との対立が米国の喫緊の外交課題に含まれる状況下で、欧州の重要性はどう見られるのだろうか。欧州からワシントンへの電話に対応する者はいるだろうか。