Photo:Reuters/Kirby Lee-USA TODAY Sports

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 ドナルド・トランプ米大統領が「香港人権・民主主義法」に署名したことは、香港および米国の対香港政策にとって重要な節目となる。そして、香港の特別な地位から恩恵を受けているビジネスや資本市場にとっては、長期にわたり脅威となるだろう。

 弁護士やアナリストらは、今回の新法は香港の関税の取り決めに関しては、米大統領に新たな権限は何も付与していないと強調する。同法の元となる1992年の「米国・香港政策法」では、関税や移民目的において、香港を中国本土とは別の管轄区として扱うとともに、施行されている既存の合意を維持するよう米国に義務づけていた。これは、香港がこのような待遇を正当化するほど十分な自治をもはや有していないと判断されない限り、有効とされた。

 新法の重要な点は、米国と香港の協力が凍結される場合について、その行程表を示したことだ。議会がほぼ全会一致で可決した同法は国務省に対し、香港の自治が守られているか毎年検証するよう義務づけた。元となる米国・香港政策法では、2007年に年次報告書の要件が失効して以降、必要とされなかった措置だ。

 香港の特別な地位を剝奪することは「残忍なトリガー戦略」だろう。この戦略はゲーム理論において、取り返しがつかないほどあらゆる協力を撤回することで、非協力的なプレーヤーを罰する容赦のないアプローチを指す。特別な地位を利用する香港の資本市場やビジネスにとっては、極めて重大な影響をもたらすだろう。

 金融市場は、こうした事態に至る確率は低いとみているようだ。ハンセンHK35指数(香港の売上高全体の半分以上を稼ぎ出す大手企業で構成)は28日、0.2%安の小幅な下げにとどまった。年初来では依然、辛うじてプラス圏を維持している。

 香港でどれだけデモが続いても、新法の成立は、香港の地位が米中関係の「生きた」一部分であることを確固たるものにする。過去10年の米中関係においては、香港政治に対する中国の影響や統治が拡大する中でも、こうしたことはあり得なかった。そうした時代は今、明らかに終わりを迎えた。

 ここ半年でどれだけ状況が変わったかを踏まえれば、国務省による年次検証は金融市場にとって、為替操作国の指定の是非を決める米財務省の「為替報告書」に匹敵するイベントとなるだろう。

 これらの報告書が、ホワイトハウスにこれまで以上の権限を付与するわけではない。米国が行動すべきか、またはいつ行動すべきかを理解する上で、報告書はその足場を提供する。

 「香港人権・民主主義法」が、米国による香港の待遇を一夜にして覆すことはないだろう。だが新たな枠組みは、香港の自治について、米中関係における恒久的な重要問題として、また国際金融拠点という香港の地位に対する「オール・オア・ナッシング」の脅威として扱うことを暗に盛り込んだことになる。

(The Wall Street Journal/Mike Bird)