「ネットワークちば」がスーパーバイザー(監督者)としてかかわっているのは岩手県陸前高田市。「ユニバーサル就労支援センター」をこの6月に設置し、2人の専任職員を配置して動き始めた。すでに2人の就労が成就。そのうちの1人は、50歳代の男性で市内の温泉施設に正職員として8月から勤務している。

 社会福祉法人では、「風の村」と同様に高齢者ケアの事業者が取り組んでいる。奈良市や生駒、大和郡山、天理市などに19の事業所を持つ協同福祉会は6年前にユニバーサル就労支援室を設け、各事業所への受け入れを進めている。特別養護老人ホームやデイサービス、ショートステイなどの事業所がある中学校区域に住む住民が対象である。これまでに雇用型と非雇用型を合わせて23人が就労している。

50歳代の引きこもり男性が就労
「8050問題」からの脱却

 富山県魚津市の海望福祉会では、「風の村」とは別に独自で2012年から生活保護受給者の受け入れをはじめ、障害者雇用にも取り組んできた。

 現在、特別養護老人ホームやデイサービスなどを持つ複合施設「あんどの里」での13人のほか、富山市の有料老人ホーム「花みずき」などで合わせて20人がユニバーサル就労に入っている。

 その中の1人は、母親と同居していた50歳代の男性。うつ病で大学を中退し、就職したが引きこもりに。親類や民生委員の介入を断り続けていた。3年前に母親が同福祉会の特養に入居すると、食事時に面会に来るようになる。母親への依存心が強く「母親が旅立ったら、僕の人生も終わり」と話していた。

 それが、職員から「ここで掃除の仕事をされては」と声を掛けられ、ユニバーサル就労につながった。母親は亡くなったが、今では、配膳や下膳、洗濯物の管理、シーツ交換などに携わり、この6月には雇用契約を結んだ。「8050問題」からの脱却である。

 また、市役所から頼まれたのは一人暮らしのひきこもり男性だった。2014年から営繕関係の仕事に、その後配膳にまわるうちに、介護保険の介護職員初任者研修資格を取得し、身体介護もできる非常勤職員となった。夜勤も含め1日8時間、週5日のローテーションにも入っている。

 こうしたユニバーサル就労が各地で広がってきているが、その多くは国の制度にのっていない。国の生活困窮者自立支援制度では、自治体が設けた相談窓口に赴き、支援計画(プラン)の作成を経ないと、事業所での訓練事業に入れない。だが、引きこもりの当事者や家族は社会的困窮者ではあるが、低所得の生活困窮者という自覚があまりない。
 
 そのため、国の制度よりも間口が広く、より柔軟な対応ができるユニバーサル就労の事業所や関係団体に直接問い合わせをしたり、そのスタッフの訪問を受け入れたりすることが多いようだ。スタート以来5年もたちながら空振り状態の国の制度は、ユニバーサル就労をモデルに見直しが迫られている。引きこもり問題は待ったなしの緊急課題である。

(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)