ちなみに、報道と関係者の話でしか知りませんが、GAINAX WESTに取締役として入っていた人物が、2017年に自身がプロデュースした神戸市のアニメ関連施設で問題を起こし、取引先や行政に多大な迷惑をかけた揚げ句、入居していたそのアニメ関連施設自体が閉鎖となったそうです。ガイナックスの名を使って活動し、このような事態を起こす人物を引き寄せていたのは当時のガイナックス関係者ですが、問題発覚と同時に無関係を主張していました。

僕たちが心血を注いで作ってきた
作品資料の保全が心配だった

 当時ガイナックスの経営陣だった人たちが「ガイナックス」の名前を冠する会社を次々設立していく中、当の「ガイナックス」が外国企業に身売りするという話が聞こえてきました。

新世紀エヴァンゲリオン
©カラー/Project Eva.

 真相を探っているとそのガイナックス買い取りを考えているという外国企業からわれわれのほうに「ガイナックスを買収したら庵野監督が映画を作ってくれるのか?」という問い合わせがありました。

 これらの状況から、ガイナックスからの返済をただ待ち続けていると、ガイナックスに残っている作品の権利や制作資料がわれわれの知らない誰かに売却され散逸する危惧が高まってきました。

 貸したお金が戻らないのは仕方がないとしても、自主制作時代から僕たちが心血を注いで作ってきた作品資料の保全が心配でした。

 その貴重な資料の散逸を防ぐことを最大の目的とした、会社の債権の仮差し押さえの申し立てを2016年8月1日に行い、8月26日に執行されます。当時のガイナックス経営陣から何ら具体的な説明も、山賀社長(当時)からの連絡もない状況が続き、やむを得ずの判断でした。

 その後、仮差し押さえの執行後も当社債権にかかわる返済計画などが示されることはなく、ガイナックスに預けていた貴重な制作資料や権利がこれ以上散逸するのを防ぐために、やむを得ず、2016年9月9日に、貸金返還請求訴訟を起こしました。

 この訴訟も、債権回収のための手段として選んだわけではなく、本件が表ざたにならないようガイナックスに配慮してのことでした。先方の経営陣が連絡をよこし示談に応じれば内々の話し合いで済んでいたことです。しかし、ガイナックスは裁判で争う姿勢を示したことでニュースとなり、全国に知られることとなりました。

 この裁判自体は、2017年6月23日に当社カラーの全面勝訴で判決が確定しています。

 そんな中で、自分たちが深く関わっていた複数の過去作品の重要な資料が大量に、福島ガイナックス(現株式会社ガイナ)に売却されていたことが判明します。これも作品の関係各社や制作に携わったスタッフたちの知らない間に行われていたことでした。

 ちなみに、それらの資料は、人と手間と時間とお金をかけてカラーが入手し、作品関係各社の了承を得て、今は「ATAC」(特定非営利活動法人アニメ特撮アーカイブ機構)の管理下で保管しています。

刑事事件の被疑者となった人物を
社長に就任させたのは当時の経営陣

 2016年9月30日に、ガイナックスのアニメーション制作部門のスタッフは全員解雇され、その直後に設立された「福島ガイナックス東京スタジオ」(現スタジオガイナ)に移籍させられています。これまでわれわれがガイナックスを支援してきた意味が失われる事態でした。その年11月には「ガイナックス京都」が京都府に設立されます。