日本からの脱出を企てたカルロス・ゴーンは、裁判所から指定された東京の住居から、約480キロ離れた大阪まで列車で移動した直後、底にドリルで穴を開けた黒い大型ケースの中に身を隠した。 ゴーンはそれまでに、何カ月もの計画期間と何百万ドルもの費用を費やしてきた。それは12月29日、日曜の夜のことだった。その瞬間は、計画を企てたグループの一部メンバーでさえ一時は実行不可能ではないかと懸念した脱出劇のまさに正念場だった。今回の顛末を知る人物によれば、日産自動車前会長の日本脱出計画のために雇われた民間のセキュリティー専門家チームは、空港のセキュリティーチェックをかいくぐり、ゴーンが身を潜めるケースを運び出すというこの計画の予行演習はしていなかったという。こうした大きな密航計画では一般的なことだ。彼らがこの空港の下調べを行ったのはわずか2回。そのうち1回は当日の朝だった。