――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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金相場は8日のアジア取引時間帯に1オンス=1600ドルを超え、ほぼ7年ぶりの高値をつけた。イラクにある駐留米軍基地に対するイランのミサイル攻撃がきっかけとなったこの上昇は、対立の影響が米経済の見通しに波及しない限り短命に終わるだろう。
金は対立や緊張がエスカレートした際の資金逃避先として有名だが、長期的な金相場を占う役割はあまり果たさない。代わりに米国の実質利回り(国債利回りからインフレ率を除外)が、金相場の動向を映す最も重要な要素となっている。
この関係は完璧ではないが、両者には目立った相関性がある。金融危機以来、金相場が大幅に上昇または下落した時には、実質利回りは逆方向に動いている。
この関係は感覚的に分かりやすい。実質利回りはリスクフリー金利の代表だ。金利が上がれば、金をはじめ、金利や配当などの収入を提供しない投機的資産の魅力が低減する。
もちろん実質利回りは、国際的な経済秩序のどこかで起きている何かを巡るパニックを示唆するケースも多い。しかし、それが常に正確だとは限らない。昨年は実質利回りが沈むなか金は約19%上昇し、2010年以降で最良の年となった。一方でS&P500種株価指数は、景気後退懸念が消えるなか、過去7年で最も速いペースで上昇した。08年にはS&P500指数が40%近く下落したが、金はほとんど上昇せず、資金逃避先の役割を果たさなかった。
ゴールドマン・サックスで商品調査部門を率いるジェフリー・カリー氏は今週のリポートで、2001年9月11日の米同時多発テロ直後やイラン・イラク戦争および湾岸戦争の前に金が上昇したことに言及した。だが、いずれのケースでも上昇はそれほど続かなかった。これはまさに、より広範な世界経済――そして米国債の実質利回り――に対する影響が引き続き限定的だったからだ。
10年物の物価連動国債の利回りは実質ゼロと、金融危機後の標準と比べても既に低い。一段の低下もあり得るが、投資家は米金融政策の予想外の路線変更に注意しておくべきだ。2013年には、ベン・バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長が量的緩和策の段階的縮小について予想外の主張をしたことから、実質利回りが上昇し、金が下落した。
数時間や数日ないし数週間単位で相場を見ているトレーダーは、事態の激化と緩和の短期サイクルに基づいた取引の方法を金から得られるかもしれない。一方、もっと遠くを見ている投資家にとっては、実質利回りが最も重要だ。



