NEC、富士通、NTTデータグループ、日立製作所のITベンダー4社の業績と株価が急回復している。かつてはDXブームに乗り遅れ感があった企業の「逆転」はなぜ起こったのか。今後のリスクはないのか。そしてITベンダーとしてはほぼ肩を並べてきた4社の中から、「一抜け」した企業はどこか。特集『DX180社図鑑』(全31回)の#5で、ITベンダー4社の最新決算をベースにトップ業界アナリスト3人が読み解く。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
NECは株価が2年で2.5倍に!ITベンダー4社
「絶好調」の裏側にあるものとは?
2024年3月決算期は、長年不遇をかこってきたITベンダーが逆襲ののろしを上げた期だったといえるかもしれない。NEC、富士通、NTTデータグループ、日立製作所のITサービス関連事業が爆発的な増収増益を記録したのだ。
24年3月期のNECのITサービスセグメントは売上収益で前期比9.1%増、調整後営業利益で同23.9%増だ。富士通のサービス・ソリューションセグメントは売上収益で同9.9%増、調整後営業利益で同45.5%増。日立のデジタルシステム&サービスセグメントは売上収益で同9%増、調整後EBITA(利払い・税引き・一部償却前利益)で同14.0%増。全社事業がITサービスであるNTTデータの連結売上高は同25.1%増、営業利益は同19.5%増となったのだ。連結ベースでは事業再編の影響などで、日立は減収増益、富士通は増収減益、NECとNTTデータは増収増益と明暗が分かれたが、本業のITサービスにおいては全社がこれ以上ないほどの好業績で終わったのだ。
業績好調の主因はDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームである。新興ベンチャーやコンサルティングファームに市場を軒並みさらわれ、大手ITベンダーはDXブームに乗り遅れるという、数年間続いた傾向ががらりと変わったのだ。
というのも、「大手ITベンダーの既存顧客である大企業が全社的なDXを始めた。最近数年間DX案件を率先して手掛けてきた新興系のDX企業や外資系コンサルがこなし切れない大型案件が出てきており、それをこれらのレガシー系ITベンダーが受注できるようになってきた」(上野真・大和証券チーフアナリスト)からだ。
また、案件の大型化とともに、レガシーシステムを抱えた大手企業の顧客に対しては、メインフレームなどで組まれ、往々にして複雑化した既存システムの知識が必要になる。新興企業では対応できない。
業績回復に株価も反応している。新興DX企業の株価が暴落する中、4社の株価は右肩上がりなのだ。
特にNECの株価はこの2年間で2.5倍になった。23年1月時点で、PBR(株価純資産倍率)が1倍を切るという不名誉な記録を作ったのはITサービスセクターでNECだけだったが、まさかの大変身である。
ITベンダーとしてはほぼ同業でしばしば同じ顧客を取り合う4社だが、それぞれの立ち位置は大きく異なる。今後の業績や株価はどうなるのだろうか?IT業界担当のトップアナリスト3人にその見立てを詳しく聞いた。ITベンダーにとって競争力の源ともなる給与水準の予測値についても、次ページから詳しく見ていこう。