今期の月9ドラマ『海のはじまり』が話題を呼んでいる。幅広い世代に人気の有村架純や、『silent』で好評を得た目黒蓮がメインキャストを務めていることもあるが、何よりそのストーリーの切なさ、やるせなさが視聴者を釘付けにしている。キャストにいまいち思い入れが薄い中年こそが、心をつかまれてしまうのはなぜなのか。(フリーライター 武藤弘樹)
青春の輝かしさと救いのなさ
「月9」面目躍如の人気ドラマ
『海のはじまり』というテレビドラマが話題を呼んでいる。フジテレビ、月曜9時(21時)からということで、国民の期待を背負い、またフジもそれに応えてきた歴史のある、肝いりの枠である。
その大変な話題ぶりは、「4週連続でXの世界トレンド1位」「見逃し再生数月9ドラマの歴代記録」といった成果になって表れた。
【参考】WEB ザ テレビジョン
https://thetv.jp/news/detail/1209330/
テレビドラマに対するアンテナがほぼないといっていい筆者ではあるが、同世代(アラフォー)の視聴者たちが熱っぽく語り合っているのを見て、このドラマを知った。幅広い年代に支持されている人気ぶりだが、とりわけアラフォーやそれ以上の世代は、その世代なりの観点からこのドラマを観ていて、それゆえに内容が深く刺さっているようで、他の世代に比べてやや特殊な事情を抱えているように見える。
かくして私も第1話の視聴に至ったが、なるほどこれは、青春の輝かしさと救いのなさや、優しく正しく生きようとする人の苦しさ、美しさなどを考えさせられるという、視聴するだけで修行的な効果があって魂のレベルが上がりそうなものすごいエンターテイメントであり、「いいドラマをオススメする」と「問題意識を共有してもらう」という2つの目的から、誰かに視聴を勧めたいドラマであった。
後者の「問題意識の共有」は、言ってしまえば結構重たく、「未視聴の人にも同じ苦しみと葛藤を味わってほしい」という、ややネガティブ寄りの感情を含むが、葛藤はすればするほど意味のあるもの(だと筆者は思う)で、そうした場合の流布は悪くないはずである(と思いたい)。
さて、中年以降の視聴者にとって、『海のはじまり』のどこの部分が特に刺さったのか。