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インキュベーションの虚と実

ひとりよがりでは最強のチームをつくれない
間違いだらけの人と組織

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第8回】 2012年8月6日
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ワンマンからチームの時代に
自分たち“らしい”チームをつくる

 ここまで書いたような話をすると、「理屈はそうかもしれないが、結局は社長でしょ?」と言う人も少なくない。ベンチャーの成功=カリスマ社長という図式は人々の頭に焼き付いている。

 しかし、DeNA、グリー、ミクシイはそうではない。NHNもオーナーの力は強いがLINEを生んだのはチームワークだ。もちろんリーダーシップは必要だが、不確実な知識集約産業で勝ち抜くには、ワンマンでは限りがある。

 筆者が会長付を務めたCSK/セガ・グループを率いた大川功氏は、兄の会計事務所を手伝い、タクシー会社の経営に参画して、金と人について修羅場をくぐり経験を積んだ。そして飽くなき好奇心・探究心があったからこそ、オーナー経営者として成功した。その大川氏も、自分で何でもやらずに、イエスマンでない人材にセガやベルシステム24などの経営を任せたことでグループの発展を可能にした。メディアではワンマンと書かれることが多かったが、実態は違ったのである。

 もっとも、日本の事業環境が創業社長一人に荷を負わせる傾向が強いのは事実だ。しかし、そんな旧式の流儀に合わせることはない。一人でできることは限られる。

 優れた仲間とチームをつくることは、シリコンバレーでも年々さらに重視されている。いまアキュハイヤー(acquisition/hireを縮めた造語、人材獲得のための会社買収の意)という言葉がよく聞かれる。Yコンビネーターはテーマにかかわらずチームがよければ投資育成する。

 もちろん、優れた仲間を得るには、自分自身が人を惹きつけることができなければならない。そして成長し続ける、つまり人を惹きつける力を増進させ続けることだ。

 ここまで読んだ方には、こんなの自分には無理だ、スーパーマンじゃあるまいし、と思った人もいるかもしれない。しかし、自分は自分。努力は必要だが、自分“らしく”やればいいのだ。前回第7回でも「Be yourself」が鍵だと記した。会社のカルチャーも、「べき」論で無理をするよりも、自分あるいは自分たち“らしい”ものを徹底的に追求すればよいのだ。

 どうもこれまで日本では、起業家たることに、過剰な頑張りやツッパリに暗黙の期待がされていたのではないだろうか。筆者が1980年代後半に日米の起業家の比較研究をしたときに、簡単に言うと、日本の起業家は、自分は他の人と違うという意識が強烈(強すぎ)な人が多く、シリコンバレーではもっと普通の人が多かった。いまの日本でも、普通にパッションや才能がある人が起業すればよいと考える。もちろん、志を持ちながらも、謙虚かつ貪欲に学び成長することは求められる。

 付言すると、口下手なエンジニア起業家が雄弁な営業系起業家より、オモロイというかビジョンや意見があって、人を惹きつけることは珍しくない。パーフェクトな人などいない。不得手なことがあっても、生命エネルギーが高ければ、立派に未来を築く起業家たりえるのだ。社長は頼りないというか心配だからと、チーム・メンバーが支えて成長するベンチャーもあるくらいだ。

 そして、ひとりよがりでなく、形だけ追いかけるのでもなく、自分たち“らしい”生命エネルギーあふれるチームをつくって、成長を目指していただきたい。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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