真のニーズを掘り起こして急成長を遂げたバルミューダ

 実は日本企業の中に、この「エクスペリエンス戦略」によって過大な営業なしに商品が大ヒットし、急成長を遂げた企業がある。家電ベンチャー企業の「バルミューダ」だ。

 バルミューダは今でこそ、蒸気を使ってパンをふっくらと焼き上げる高級トースター「BALMUDA The Toaster」などが有名であるが、最初のヒット商品は3万円もする高級扇風機「グリーンファン」だった。当時からバルミューダが最重視していたのも、ユーザーエクスペリエンスであった。

 2017年10月19日放送の「カンブリア宮殿」によれば、このまったく新しい扇風機を開発するきっかけになったのは、「子どもの頃、自転車で走っているときに体に当たる風が気持ちよかった」という体験を、同社の社長である寺尾玄氏が思い出したことにあったという。

 これによって生まれたのが、「自然界にあるやさしい風を再現する」まったく新しい扇風機「グリーンファン」だった。

 グリーンファンは、ただ単に扇風機の機能を向上させるという単純な足し算型の思考ではなく、「人は扇風機にただ単に涼しい風を求めているわけじゃない。人々は、扇風機の風に心地よさを求めているのだ」といった、正に「エクスペリエンス思考」の上に立って開発された製品だった。

 そういった思考にのっとり、「扇風機から自然界のやさしい風を感じられる」という感動体験を実際に生み出した結果、グリーンファンは累計30万台を超える大ヒット商品となった。

 バルミューダには、このグリーンファンのヒット当時、ほとんど営業マンがいなかった(そもそも同社には、当時社長を合わせ3人の社員しかいなかった)。

 バルミューダの企業説明文にはこうある。「バルミューダは家電という道具を通して、心躍るような、素晴らしい体験を皆様にお届けしたいと考えている企業です」。

 その後バルミューダは、「最高の香りと食感を実現する感動のトースター」を謳う「BALMUDA The Toaster」がさらなるヒット商品となり、多くの人にその存在を認知されることになる。みなさんもSNS上で一度は、バルミューダの製品を目にしたことがあるだろう。