金正日(キム・ジョンイル)総書記時代の北朝鮮で育った池成鎬(チ・ソンホ)氏は、民主主義を経験したことがなかった。それを初めて味わったのは、片腕と片足を失った池さんが手製の松葉づえを突いて韓国に逃れた1年後の2007年。地元の市場で大統領候補が演説するのを目にしたときだった。「誰もが1票を持っており、その1票が人間の存在価値を高める」。池さんはソウルの商業地区にある自身の控え目な事務所でインタビューに応じてこう述べた。「議員になったら、その歴史の1ページを刻んでいくことになる」池さんは外国では、18年のドナルド・トランプ米大統領の一般教書演説で松葉づえを掲げたことで最も知られている。同氏は現在、4月15日に実施される韓国の国会議員選挙に出馬を表明しており、増加する韓国で政治に関わろうとする脱北者の仲間入りをしている。