正しくは、リスクとリターンとの評価尺度を決めて、最適なリスクとリターンの組み合わせを求めるべきで、プロの運用はそうでなければならない。

 もっとも個人投資家の場合、リスクとリターンの評価尺度を決めることが難しいと思う場合が少なくない。こうした場合は次善の策として、(1)取り得るリスクの大きさを求めて、「その範囲の中で」(2)リターンとリスクの組み合わせを決める、といった考え方が現実的だ。

 先に挙げた3600万円持っている個人のケースだと、1080万円をリスク資産投資の上限として、その範囲の中でいくら投資するかを考える要領だ。

 人生でもしばしば、こうした手順で考えることが実際的だ。「この事業に失敗しても家を手放せば何とかなるだろう」とか、「断れられても死ぬことはないのだから勇気を持ってプロポーズしてみよう」とか、「最悪の事態が起きても大丈夫だ」という確認の下に人間は前に進もうとする。

 一つ気に入らないのは、大きなお金を運用していて、プロ中のプロであるべき公的年金の運用計画が実は、(1)先に目標リターンを決めて、(2)後でなるべくリスクを小さくするように、といったプロセスで決まっていることだ。

 2014年度に行われた公的年金の基本ポートフォリオの策定は、「先に賃金上昇率+○.○%」と目標リターンを決めて、これをある種のリスク計測方法でなるべく小さなリスクで実現するようにといった、使った方法は複雑だが原理的に不適切な考え方で策定された。

 損失の想定は一応計算できるデータが発表されていたが、「損をした場合にどうする」という「プランB」が議論された形跡はない。何よりも、元々の目標リターンが最適なものであるのかについては明示的に検証されていない。

 19年度は、公的年金の新しい基本ポートフォリオ案が策定されるタイミングなので、どのような考え方になるかに注目してほしい。