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「どこにも在庫がない!」「いつ入荷される?」――。米アップルのワイヤレスイヤホン、AirPods Proは昨秋の発売以来、人気沸騰で入手困難な状態が続く。幸運にも在庫に巡り合った人は、迷わず購入した方がいいかもしれない。中国発の新型コロナウイルスによる肺炎(新型肺炎)の影響で、この製品の生産と出荷に大きな混乱が生じているのだ。特集『断絶!電機サプライチェーン』(全8回)の#1でその深層を探る。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
「夏までかかるかも」
市場から蒸発した新製品
「新型肺炎の後、入荷はさらに少なくなりました。見通しはまったく立ちません。今注文しても手に入るのは、最長で夏になるかも……」
東京・秋葉原の家電量販店。米アップル製品販売コーナーの店員は、申し訳なさそうな表情でこう説明した。最新型のワイヤレスイヤホン、AirPods Proの入荷見通しを尋ねた際のことだ。アップルのインターネット通販サイトでも、出荷日は1カ月先となっており、他の製品より大幅に長くなっていた。
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2019年10月に発売されたAirPods Proは、アップルのワイヤレスイヤホンとしては第3世代に当たる。AirPodsシリーズはiPhoneと簡単に接続できる使い勝手の良さが強みで、以前から人気が高かった。これに加え最新の製品には、外部の騒音を消してくれる「アクティブノイズキャンセリング機能」(ノイキャン機能)が新たに搭載されたことから、人気が爆発した。
ノイキャンイヤホンといえばこれまでは、ソニーと米ボーズがツートップの領域。そこに後発で参入したアップルは、猛烈な勢いで市場勢力図を塗り替えようとしている。AirPods Pro発売を受け、19年10~12月期のワイヤレスイヤホン市場は、アップルの金額ベースシェアが60%を突破している(下図参照)。
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