トランプ米大統領とサウジのハンマド皇子Photo:Reuters

 サウジアラビアとロシアが原油市場で価格戦争を激化させている。サウジは生産量を記録的な水準に引き上げる構えだ。ロシアは増産態勢が整っていると言明している。

 両国が威嚇し合う姿勢を強める中でも、サウジのハリド・ファリハ前エネルギー相はロシアのアレクサンドル・ノバク・エネルギー相と折衝し、増産を撤回してOPECとロシアの協調減産を再開させる試みを続けている。サウジ政府顧問や関係者の話で明らかになった。

 ファリハ氏は2016年、最初の協調減産を交渉した人物だ。現在は投資相を務める。顧問らによると、ノバク氏への打診はサウジ指導部の承認を得て行われている。ファリハ氏の仲介が成功すれば、OPECとロシアなど非加盟産油国は4月に緊急会合を開く見通しだという。

 ノバク氏は、ロシアがOPECとのさらなる協力の可能性を排除したわけではなく、次回会合は5月か6月に予定されているとし、「扉は閉ざされてはいない」と述べた。

 対立が激化したことを受け、ドナルド・トランプ米大統領は9日、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と世界のエネルギー市場について協議するため電話で会談した。ホワイトハウスが10日朝、明らかにした。

 サウジが大幅な価格引き下げで狙っているのは、ロシアの中核市場である中国や北欧だ。サウジやOPECの関係者によると、サウジは米国の産油業者にも狙いを定めている。

 ロシアのエネルギー相はコメントを控えた。サウジのエネルギー相はコメント要請に応じていない。

 サウジの決断について、背景となる論理が分からないと言う関係者もある。OPECの協議関係者によると、ムハンマド皇太子による最近の権力掌握や国際的な地位向上の試みが影響しているとの見方もある。

 ロシアは減産を巡り、サウジ主導のOPECと妥協点を見いだすことができなかった。これに先立ち両国は2月上旬、より広範かつ長期の協力関係を結ぶ可能性を協議していた。事情に詳しい関係者によると、一つの筋書きとして、経済制裁を敷かれたロシアに対しサウジが投資を加速させ、シリアでのロシア軍の活動を援護する可能性も浮上していた。

 ムハンマド皇太子は結局、これに同意しなかった。関係者によると、米国を遠ざけることは避けたいとの思惑があった。数週間後、ロシアがサウジ主導の減産計画を拒否したのとほぼ同時に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はサウジの敵対国トルコとの関係改善に乗り出していたという。

 サウジ政府顧問の一人は、「もはや自尊心の問題になっている。原油市場の問題ではない」と語った。