新型コロナウイルスPhoto:Reuters

>>前編はこちら

 一部の医師は当初、治療している患者が華南市場の関係者であることを知らなかった。このことがパターンを見抜くのを難しくした。

 武漢中心病院では12月16日に同病院で最初の新型ウイルス患者を受け入れた。65歳の男性で、発熱以外の症状はなかった。同病院救急科を指揮するアイ・フェン氏は2月18日のインタビューで、男性が新型ウイルスの患者であることを医師らは当時知らなかったと話した。

 コンピューター断層撮影(CT)検査を行ったところ、両肺に感染があることが分かった。しかし抗生物質や抗インフルエンザ薬を投与しても状態は変わらなかった。アイ氏によると、男性が華南市場で働いていたことを病院のスタッフが知ったのは、男性が別の病院に移されたあとだった。

 医師が華南市場の関係者の症例を結び付けて考え始めたのはさらに11日後のことだった。アイ氏はつながりに気付いた最初の医師の一人だった。

 12月27日、アイ氏は同じような症状のある2人目の患者を受け入れ、ラボ検査を発注した。翌日には原因不明の肺炎の患者7人を診察した。4人は華南市場と関係があり、販売業者の母親も含まれていた。

 伝染性の病気かもしれない。アイ氏は当時そう思った。

 12月29日。アイ氏は病院の上層部にこのことを知らせた。中国CDCの支部にも連絡すると、武漢の他の地域からも同様の報告があったと言われた。

 12月27日には湖北省中西医結合病院の医師の一人も警鐘を鳴らしていた。このことは国営メディアがのちに報じている。

 12月30日。アイ氏は発注したラボ検査の結果を受け取った。そこには「SARS(重症急性呼吸器症候群)コロナウイルス」と書かれていた。2002年に中国で発生し、世界で774人の死者を出したのと同じ種類のウイルスだ。