新型コロナウイルスの経済的インパクトは劇的だが、世界の政治に対するこのウイルスの影響は、さらに大きいかもしれない。まず、一部諸国が比較的早期に回復し、他の諸国がより長期的でより深刻な社会的・政治的危機に直面することで、世界のパワーバランスが大きく変化する可能性がある。しかし今回の危機は、各国の国内政治にも影響しており、この点での変化が、最も長期にわたる影響を及ぼす公算が大きい。今回のパンデミック(感染症の世界的大流行)が起きるかなり以前から、しばしば独裁的指導者の下で進行したポピュリスト(大衆迎合主義者)的動きが、エスタブリッシュメント(既存勢力)による中道派の政党や思想と対立する状況が、世界各地で生じていた。1990年代から国際的な中心課題となってきたグローバル化支持の自由貿易政策が、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、欧州連合(EU)などの国際機関とともに、ポピュリストらの主要な標的になってきた。