欧米当局は株主還元策を制限
日本では配当制限がない
注意すべきことは、欧米当局が銀行の株主還元策を制限していることだ。欧州当局は配当を制限し、米当局は自己株取得を制限している。新型コロナの感染拡大で苦しむ企業や個人が増える中、余剰資金を株主還元に振り向けず、企業や個人の金融支援を手厚くするべきとの考えが背景にある。
日本の金融当局も同様の制限を銀行に課す可能性も考えられるが、筆者は当局が株主還元策を制限することはないと読んでいる。あるとすれば、日本の銀行が自主的に自己株取得を控える程度だろう。収益低下で魅力が薄まっている銀行株で配当がなくなれば、銀行株の暴落は避けられない。当局は、銀行株の暴落により金融危機が想起される事態を何としても避けたいはずだ。
銀行株の下落を望まない当局の意図が、垣間見えた動きも最近みられた。ゆうちょ銀行の株価は3月に一時826円まで下げたが、3月末に1000円付近まで上昇した。ゆうちょ銀行株は3月末に866円を下回ると、親会社である日本郵政グループに2.9兆円の減損が発生する恐れがあった。
筆者は、コロナ禍の局面でゆうちょ銀行株を積極的に買い進める投資家がいるとは思えず、日銀や年金の公的マネーが同行株を買い支えた可能性が高いと見ている。当局は銀行株の動きをかなり気にしていると見られ、株価暴落につながる可能性がある配当制限を迫るとは考え難い。
配当が継続されるならば、銀行株には一定の訴求力が残り続けることになる。前述したように、新型コロナの感染拡大をきっかけとした融資の増加などにより、銀行は存在感を取り戻す可能性がある。今後は、投資対象としての銀行株に再考の余地が出てくるかもしれない。
(QUICK企業価値研究所 シニアアナリスト 柊 宏二)



