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新型コロナショックが銀行の決算を直撃しそうだ。世界同時株安などの市場の混乱に伴い、有価証券の価格が急落。加えて、資金繰りに窮した取引先企業が続出しており、与信コストは急増の気配を見せている。特集『日本企業、緊急事態宣言』の#4では、運用難やマイナス金利にあえぐ中でコロナ禍に見舞われた銀行業界の苦境を描く。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

「2020年3月期決算に、損を出すか出さないかギリギリまで悩んでいる」──。ある大手地方銀行の幹部は、そんな複雑な心中を打ち明ける。

 同幹部は、市場運用部門からの報告書に目を通し、自行の有価証券のポートフォリオ、そしてあらゆる金融商品の相場の先行きにも目を凝らしている。その結果、「負の遺産を今期に引き継がない方がいい」と判断。有価証券の含み損を20年3月期決算で実現損として計上する方針を固め、監査法人との協議に入ったと明かした。

 新型コロナウイルスの感染拡大はとどまることなく、安倍晋三首相が4月7日に緊急事態宣言を発令するに至った。日本国内だけでなくグローバルで生産と消費の停滞が加速しており、その影響は世界中の金融市場にも及んでいる。

 3月には、世界的な株安が発生。日経平均株価は、約3年4カ月ぶりとなる1万6000円台の安値を記録した。その他にも不動産投資信託(REIT)の急落などもあり、金融機関の市場運用事業は火薬庫になりつつある。

 すでに、大手銀行グループでは、損失計上の開示も相次いでいる。

 3月31日、業界最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は、20年3月期の連結決算で約3600億円の特別損失を計上する方針を示した。原因は、出資先である東南アジアの複数の銀行株の下落だ。

 直前の第3四半期(4~12月期)決算で、同社は買収したインドネシアの銀行の株価の低迷に伴い、約2000億円の特損を計上する見込みだと発表していた。期末の3月末までに株価が回復すれば損失計上を免れるはずだったが、あえなく損失が確定。加えて、傘下のタイとフィリピンの銀行もコロナ禍により株価の下落が生じ、それに伴う減損処理が拍車を掛けたかたちとなった。「キャッシュアウトが生じるわけではない」(同社首脳)ものの、同グループの20年3月期決算は、3メガバンクグループでの首位陥落がほぼ不可避の情勢だ。