有料老人ホームといっても、種類やグレードはさまざまで、入居後のトラブルも多い。「こんなはずではなかった」と悔やむことのないように、“終の住み家”を慎重に選びたい。
東京都内のある有料老人ホームで生活する広谷忠夫さん(仮名)は、じつは現在、2つ目のホーム暮らしだ。広谷さんは要介護者ではない。「一人っ子だった息子夫婦に迷惑をかけたくない」と、将来のことを考え、早々に自宅近くに新規開設するホームに決めてしまった。いざ入居してみると、重度の要介護者が多く、健康な広谷さんは気が滅入ってしまい、ホームを変えた。現在は趣味の囲碁仲間も増え、楽しく生活している。
意外と知られていないことだが、有料老人ホームには、介護中心の施設と、自立生活者中心の施設があり、それによって部屋の広さや共用施設などが異なる。
「まず、介護が必要な人が入るのか、自立生活者が将来のために入るのか、それによって選び方が違ってくる」というのは、高齢者住宅のコンサルティング会社、タムラプランニング&オペレーティングの田村明孝社長。
総じて介護中心の施設は、入居一時金が2000万円程度までで、部屋もそれほど広くはない。雰囲気は病院の個室に近い。
反面、入居一時金が6000万円を超えるような高額な施設は、総じて自立生活者中心で、入居時は自立生活できることを条件とする施設が多い。内部はホテルやマンションのような雰囲気である。
自立生活できる人が残りの人生を安心してエンジョイしながら過ごすのか、自宅では面倒が見られない介護レベルの重い親の面倒を見てもらいたいのか。また、特養に入居するまでの待機や自宅を介護用に改築するまでの一時利用か、それとも一生住むつもりなのか――。目的によって最適な施設が異なる。
「予算を含め、希望する立地や条件をきちんと整理することが大切」と田村社長は言う。