介護保険制度導入後、急増した有料老人ホーム。業界には、新規参入業者も多く、強引な営業に起因する苦情やトラブルなども増えている。複数の元営業マンや関係者らがその驚くべき営業手法や施設の内情について、赤裸々に語った。
「誰に決定権があるのか、おカネを出す人は誰か。キーマンを見つけ、攻めるのは営業の基本」
こう話すのは、大手有料老人ホームの元営業マンの住田純一氏(仮名)。7年連続で成績トップだったという営業の達人である。
その手法はきわめて泥臭い。たとえば、あなたが家族と有料老人ホームを見学後、帰ろうとすると住田氏はタクシーを呼ぶ。あなたは感謝してタクシーに乗り込むが、じつはこの運転手は施設側の「スパイ」だ。「毎月決まった金額をタクシー会社や運転手に渡し、誰がキーマンか。ほかに見学していた施設はあるか。どんな会話をしていたのか。逐一、報告してもらった」という。
こんな例もある。突然、要介護者を抱えた家族がまず信頼し、いちばんに頼るのはケアプランを作成するケアマネジャーだ。事実、ケアマネや病院のソーシャルワーカーの紹介による決定率はきわめて高い。「そんな金脈を業者が放っておくわけがない」と住田氏は言う。
「当然、現金を手渡し、紹介してもらいます。有料老人ホームの紹介業者を通じての紹介となると数十万円の出費となるが、ケアマネなら5万~6万円程度ですむ。決まる確率も高い。小づかい稼ぎで現金を受け取るケアマネは多い」と実態を語る。
最近、急増中の有料老人ホーム紹介業者は便利な存在で良心的な業者もいるが、「入居率が低い有料老人ホーム業者では、そのグループ会社が運営するヒモ付きも多い」(住田氏)。決まった業者ばかりを紹介する紹介業者やケアマネは要注意だ。