中国とインドの兵士がヒマラヤ山脈の国境付近で激しく衝突したことで、中印の政治関係が冷え込みかねない状況に陥っている。今回の衝突はまた、本来なら中国が支配してもおかしくないアジアの貿易を巡り、中国が主導的役割を果たすことがなぜ難しいのかを如実に物語っている。貿易協定に関しては、インドはかねて重い足を引きずり続けている。インドは日本が主導する「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」のメンバーではない。昨年には「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」への不参加を決め、大規模ながらも限定的な中国主導の貿易協定にもブレーキをかけた。インドとのハイレベルな経済的関係が危ぶまれるものはほとんどない。だが、インド兵20人が死亡したとされる今回の衝突からは、通商外交で中心的な役割を果たそうとする中国の野心を、アジア地域全体の係争が妨害しているという、より広範な構図が浮かび上がってくる。こうした争いは、国境を越えた規制の枠組みを整備する能力にも影響を及ぼしている。